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爆散雪像配信03

 人は自分が作ったものではないのにそれを自分の共有財産であるかのように扱う生き物である。俺はこれが一番嫌いで、それを楽しんでいる人間を目にしたことが、それが怒りの原因。



 歌詞に共感した、歌声に感動した、みんながやっているこのダンス楽しい、このアニメ・ゲーム楽しいからみんなにも知ってほしい、そうだ自分でやって楽しもう。同じだ。小説のイチ行に感動したとか、それもここに該当する。漫画のセリフも変わらない。ビジュアルノベルゲームも同じだ。変わらない。



 好きになることと、感動すること、共感すること、自分の中に取り込んで昇華、消化することが同じに見えているんだ。人だからな。おかしくない。でも、根底にこの間違いがあることを理解しようともせずにあんなことを平気でやることだけは、それだけは許せない。



 俺はこのイベントには微塵も関係ない。雪だるまも作ってないし、ホットワインを売っているわけでもない。助けての声を聞いてお金貰えるかなとやってきたバカだ。悪さをした人間を徹底的に追い詰めることを、そんなことは頼まれていない。



 俺はこれまでも頼まれた案件をお願いされたところまでを解決すると、なぜかその周りを掘り起してトラブルを大きくしてきたことがここまで読めば分かると思う。トラブルってのはさ、目の前の一つを解消すればそれでいいってわけには行かないだろ。そんなのは探偵にでもやらせていればいい。俺はこの街のトラブルに頭を自分から突っ込んでいるんだ。助けてちゃんの目の前が一つ解決したと思ったら今度は違うことがでてきてまた助けてちゃんになったら、それは俺の負け。トラブルってのは目の前で起きたひとつの事象を指すんじゃない。もっとちゃんと理由があるんだ。それを見届けるまでは手を引いてはいけない。受けた以上はな。



 今回の事件も、目の前で起きた事件は他県からの修学旅行でやってきた中学生が雪像を壊してしまった事象だ。それによって誹謗中傷が殺到して方々が困った。これをトラブルとして見た場合、問題は内輪ノリが原因だと分かると思う。



 義務教育の学校における人間関係ほど難しいものはない。高校生になればひとりで生きている環境になるが、それまでの時間はそうにはいかない。それが修学旅行だ。仲が良い友人でも、そうでない友人でもはしゃいでしまう。これまでの生活とこれからの生活を考えられる賢い子であればあるほど、断れない。母親はそんなことをする子じゃ絶対にないんですって、声を荒げるだろうけどな。



 話を戻す。ここまで怒りをぶちまけるように荒れていた俺の理由を冷静に述べれば以上のことに近いことになるが、本当は違うのかもしれない。もっと単純に、この街と人間とこの祭りに対する冒涜が許せないのだ。個人として絶対に許せないから、仲間に呼びかけた。ありがたいことに、互いに信頼しているチカラのある仲間が作戦を実行した。最後はこの作戦を実行へと秒で始めた俺に責任として回ってくる。最後まで付き合ってくれ、仲間たちよ。あっという間に終わらせてみせるから。




 街を探し回り、そして見つけた。




 俺はようやくその子を見つけることができ、声をかけた。








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