都内に着いたのは真夜中だった。さすがにみんな疲れてボロボロだった。
わたしはアパートの近くのコンビニで車から降ろしてもらい、おにぎりとウーロン茶を買って二人と別れた。
「おつかれさん」佑樹が手を振った。
二階の二○四号室がわたしの部屋だ。鉄製の階段をのぼる。ふと後ろからヒタ・・・・・・ヒタ・・・・・・と誰かがゆっくり昇ってくる気配がした。靴を履いている風でもない。裸足?わたしは振り向いた。
白熱灯の街灯が、冷たい無機質な階段を照らし出しているだけだった。気のせいか・・・・・・。
わたしは玄関の鍵を開けて部屋の電気を点ける。2LDKの狭い部屋。部屋にあがるとすぐに六畳のリビング。テーブルにさきほど買ってきた物を置く。
所狭しと積み上げられた雑誌とCD。左手にトイレとバスルーム。奥の襖を開けるとそこがベッドルームだ。わたしはベッドにダイブした。そしていつのまにか静かに寝息を立てていた。
シャワーの音で目が覚めた。よろめく足取りでベッドを降りる。枕元のデジタル時計は三時三十分を回ったところ。
「佑樹なの?」
沢村さんと別れたあと、やっぱりわたしの部屋に戻ってきたのだろうか。わたしはバスルームに近づいた。ところがバスルームは真っ暗なまま明かりがついていなかったのだ。
「あれ?」寝ぼけてシャワーだけひねって眠ってしまったのだろうか。わたしはゆっくりとバスルームの扉を開けた・・・・・・。
※※※
翌日は休日であったが、週明けの会議用にレポートを仕上げておかなければならない。もちろん車の破損報告書も添えて。
わたしはノートパソコンのソケットにSDカードを差し込んだ。画像ソフトの画面に村で撮影したキャラメルぐらいの大きさの写真が一覧になって表示される。使えそうな画像をピックアップしてレポートにしていく。
その中には例の封印された祠の写真もあった。わたしはその画像をチェックした。おかしい。どうもなにかが歪んでいる。なんだろう。ほかの画像も映してみる。変だ、森の空気が
その時とつぜん携帯電話が鳴りだした。着信音はさざえさんのタラちゃんのテーマ。これはなごむ。佑樹からだった。
「おはようなっちゃん。ゆうべはよく眠れたかい?」佑樹の声だ。
「ううん。ゆうべはあんまり眠れなくて。それよりゆうべあれから家に来なかったよね?」
「なんで?」
「どうやらシャワー出しっぱなしで寝込んじゃったみたいなのよ」
「下の階に迷惑かけてないか?」
「それは大丈夫。すぐに気がついたから」
「ふうん。それより沢村さんが消えちまったらしい。そっちに寄らなかったか?」
「なにそれ。どういうこと?」
「わからない。ご家族の話しだと急に忘れ物をとりに行くと言って出て行ったらしいんだが」
「会社の車で?」
「ああ。まさかあの村に戻ったってことはないよな」
「そんな。沢村さん、もう疲労困憊だったじゃない」
「だよな。一応実家に連絡取っておいてくれないか」
「心配だね。連絡しておく。で、いま写真チェックしてみたんだけど何か変なのよ」
「なにが?」
「なにかおかしなものが写ってるの」