あの 暗い陽射しが強く滲んだ場所に
影が焼きついた焦土の上 真朱色の壁の内に
その赤いマンションの中に ただひとり私はいて
遠く離れて心細くて でも もう家には帰れない
あの恐ろしく背の高い 顔のない何かが
後ろにずっと 私を追ってきているから
振り返ってはいけない
後ろを向けば やつの顔をまともに見てしまう
逃げ続けなくてはいけない
立ち止まれば あいつに追いつかれてしまう
それなのに 夕焼けが内側から私の瞳を刺して
きゅうきゅう眼が萎んで 熱くなってしまう
瞼を開けて 走らなければならないのに
瞼の裏には あの赤が焼きついている
ああいけない 行き止まりだ
いやに長い影が 私の影を呑みこんだ