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第9話 中ボス

 ◆1ヶ月後 第54層◆



 迷宮に入ってから1ヶ月が過ぎた。

 ずーっと悪魔を倒して、次の階へ行って、悪魔を倒して、たまにセーブポイントに行きついての繰り返しだ。ハーツは依然として手を貸してくれず、たまにアドバイスをくれるだけ。

 階を進むごとに悪魔の種類も変わっていく。数多くの悪魔を倒してきて、大体悪魔は3種に分類できることがわかった。



 人型悪魔……人間の形をした悪魔。たまに多腕だったり、複眼だったりする。比較的知能が高く、器用に動くため厄介。

 動物型悪魔……犬や猫、牛や豚の形をした悪魔。素早く、集団でやってくるため面倒だ。

 道具型悪魔……鎧や剣のように武具の形をした悪魔やタンスなど家具の形をした悪魔だ。剣に目がついてたり、タンスに口がついていたりする。不気味さ満点。独特の動きをするから動きが読みづらい。



 それぞれに最適な戦い方を選択し、効率的に倒していく。

 最初の10日で進めたのは12階までだったが、次の20日で54階まで進めた。着実に悪魔に対応できるようになってる。

 何度か挫けそうになったが、その度マハルトの顔を思い出してモチベーションをリセットした。


 よく、戦場に立つ兵士たちは愛する家族を想い、闘志を燃やすと言う。

 俺はその逆だ。憎むべき相手を想い、闘志を燃やした。あの野郎はここから出たら、真っ先にぶち殺しに行く。それがモチベーションだ。


「ん?」


 いつも通り迷宮を歩いていると、なにやら妙な部屋に辿り着いた。

 鎧や剣、槍などの武器。さらには黄金のブレスレットやら、明らかに高価な指輪とかがある。


「宝物庫だな」

「財宝ざっくざくだな~」

「迷宮に入った人間から奪った物品をここに集めているのだろう」

「囚人から奪えるのなんか囚人服ぐらいだろ」

「〈アルファム〉の王家の墓があった場所に、この迷宮が生まれたと聞く。墓に供え物としてあった財宝がここに集まっているのかもな。もしかしたら、“迷宮流し”の狙いはこれかもしれん」

「狙い?」

「“迷宮流し”なんて刑罰、目的もなく作るわけがない。〈アルファム〉王家は囚人が迷宮を攻略し、王家の墓や財宝を解放されることを望んでいるのかもな。――ま、この辺りの話は私には関係ない」

「ついでに言や、俺にも関係ねぇ。いま重要なのは武器が手に入ったことだ」


 俺は宝物庫に置いてある剣を拾う。

 鞘から剣を抜き、刀身を確認する。


「ちっ、錆びついてやがるな。これじゃ使えない」


 やっぱり剣は捨てた。


「先へ進もう。どうせ、こんな財宝持って迷宮は歩けないだろ?」

「そうだな」


 宝物庫を出て、すぐに階段を見つけた。

 俺とハーツは階段を下りる。



◆第55層◆



「なんだこりゃ?」


 階段を下りた先には大きな扉があった。石で出来た扉だ。迷宮で扉を見るのは初めてだ。


「ボスの部屋だ」

「マジか! 迷宮攻略目前だな」

「違う。大ボスではなく中ボスだ。大迷宮にはちょうど真ん中のフロアに中ボスを置く」

「じゃあまだ半分かよ」

「この扉の先にいる悪魔はこれまでの悪魔とはレベルが違うぞ。気をつけろ」

「死にそうになったら助けてくれよ」

「それはできない」

「徹底してるなぁ……」


 石の扉を押して開ける。

 部屋は大きな円形。闘技場を思い出すな。

 部屋の真ん中に、仮面を被った人型の悪魔が鎮座している。腰に剣のようなものを差しており、顔に仮面。ぱっと見人間かと思ったが、横顔は骸骨だった。


「侍だ」


 後ろにいるハーツがそう言った。

 サムライ……一度闘技場で戦ったことがある。刀とかいう剣に似た武器を使う輩だったかな。そうだ、アレは剣じゃなくて刀だった。


「【ココハ、通サン】」


 サムライ悪魔はゆっくりと、腰を上げた。

 その時、やつの全身から霊力が立ち上った。


(……凄まじい霊力! 俺よりも上か!?)


 俺は慌てて霊力を纏った。


「【参ル!!】」


 サムライ悪魔との戦いが始まった。

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