「そうか」
町はずれの森林の中。
戻ってきたティソーナから、俺はセリムと悪魔のことを聞いた。
「そのグーダムってのは金属かなんかを操る魔術を使えるんだろう。生み出した金属で悪魔っぽいのを作って、セリムに斬らせてたわけだ」
違和感が晴れた。
「【どうするよ? 今日やりにいくのか?】」
「今日は眠いから明日にしようぜ。さすがに今夜はもう仕掛けないだろうし、明日の朝にケリつければ問題なし。パティの家に戻ろう」
俺達はパティの家の前まで行って、違和感に気づく。
「灯りがついてないな」
「【もう寝てるんだろ】」
家に入る。
俺は家の中の全部の部屋を見たが、パティの姿はなかった。
「ティソーナ、セリムが抱いてた女の中にパティはいたか?」
「【いいや、いなかったぜ】」
「……考えすぎか」
そう思い、食卓を見ると、書置きがあった。
パティの書置きは俺に対して書かれていた。
『エルへ
セリム様に家へ招待されたので、帰りが遅くなります。空き部屋の1つに布団を敷いておいたので、そこを使って眠ってください。
パティより』
俺は書置きをその場に捨て、家を出た。
全速力でセリムの家に向かう。
「グーダムだったか!? そいつ、若い女が食いたいって言ってたんだよな!?」
「【そうだよ!】」
「さいっあくじゃねぇか!」
「【急げエル! パティが食われちまうぞ!】」
「わかってるって!」
霊力を纏い、さらに加速する。
幸い、パティの家からセリムの家まではそう距離はない。あっという間にセリムの屋敷が見えた。
「許さないっ!!」
セリムの屋敷の前まで行くと、パティの叫び声が中から聞こえた。
扉を開けて中へ入ると、パティが果物ナイフをセリムに向けていた。
「わたしのお父さんも、お母さんも、あなたが殺したのね……!」
「それは違うな。殺したのは俺じゃない、ここにいるグーダムさ」
「ずっと嘘をついてた! 両親の仇を取ったって……だから、わたしは、あなたに尽くして……!!」
「ああ、まったく、馬鹿な女だ。まんまと騙されて、俺を英雄だと思い、処女も金も捧げてよ」
パティは屈辱から顔を赤くする。
「まぁそう悔しがるな。お前だけじゃない、俺に良いように操られた奴はな。男は供物として殺し、女は生かして俺の物にする。そうして理想の楽園を作る。それが俺の計画だ。お前は楽園の中心に置くつもりだったのに……馬鹿なうえに、運の悪い女だ」
「セリム!!! この、悪魔め!!」
パティはナイフを持って、セリムに向かって走り出す。しかし、セリムを守るように、グーダムがセリムの前に出た。
俺はパティの肩を掴み、足を止めさせる。
「エル!?」
「やめとけパティ。霊力のこもってないナイフじゃ、悪魔は殺せねぇ」
「ほう。少しは悪魔に詳しい奴が来たようだな」
俺はパティを後ろにさげる。
「貴様は……酒場で会った男か」
「あの時は世話になったな。お返しに来たぜ」
「エル!」
パティが背後で叫ぶ。
「邪魔しないで! わたしは、あの悪魔に復讐するの!」
「ダメだ。100%死ぬぜ」
「あなたには関係ないでしょ! 放っておいて!」
「そりゃ無理だ。悪いが……」
俺は笑顔でパティの方を振り向く。
「またあんたのシチューが食いたいからよ、死なせるわけにはいかないんだ」
「……っ!?」
俺が言うと、パティはナイフを手から滑り落とし、涙を流しながらその場に座り込んだ。
「さてと」
俺はベルトに括り付けてあるロウソクを1本、手に取る。
「行くぜ、ティソーナ」
「【おうよ!】」
ティソーナが霊体で姿を見せる。
すると、それを見た相手の悪魔は眉を吊り上げた。
「【ロウソクの、付喪神……? とんだ笑い者だな】」
「ぷはははははっ! ロウソクの付喪神ぃ!? 剣でも槍でもなく、よりによってロウソク!? そんなもんでなにができるよ!!?」
「――お前らを懲らしめられる」
グーダムは砂鉄のような物を生成し、7本の剣を作る。
7本の鋼鉄の剣は俺にその矛先を向け、空中で制止する。
「【くたばれ!!】」
「エルゥ!!」
心配そうなパティの声。
鉄の剣は勢いをつけて、飛んでくる――!
「憑神ッ!!」
紅い剣閃が、7つの真っ赤な軌跡を作った。
火炎の刃が、鉄の剣を焼き尽くした。
「【なっ……!?】」
「はぁ!?」
燃え尽きる鉄を見て、セリムとグーダムは呆然とする。
俺は
「どうした? 笑えよ」