「あなたは余計なことをしないで頂戴、」
「夫人、相手はまだ幼い子どもです。手をあげるのは感心しません」
いつまでも収集がつかない現状に、宗主は仕方なくこほんとひとつ大きな咳をして注目を自分に向けさせる。このままでは、ここに集まっている従者や他の術士たちに恥を晒すだけだ。
「皆が無事だったのだから、もう良いだろう。落ち着いてからふたりに事情を聞けば、なぜこのようなことになったか解る。決めつけるのはよくない」
「なんですって!?」
「
「はい、父上」
宗主は有無を言わさず、諦めきれない夫人の肩を抱いて先に去って行った。続いて他の術士、従者たちがやれやれという顔でその後をついて行く。
前を歩く
「なあ······本当にだいじょうぶか? 母上の平手打ちは最強に痛いんだ。俺も一度されたことがあるからわかるよ、」
大切にしていた花瓶を割ってしまった時があり、
森は危ないというのは知っていた。しかし昼間なら
「こんなの、全然へーきだよっ」
いつもなら自分たちをいらっとさせるへらへらした笑い方が、今はなぜかふたりを安心させる。
「あ、そうだ! 俺が術を使ったことは、みんなには内緒にしてね?」
人差し指を立て自分の唇にあてると、ふたりだけに聞こえるように耳打ちする。理由は聞かず、こくりとふたりはただ大きく頷いた。
この瞬間から、この夜のことは三人だけの秘密となったのだ。思えばこの時から