夜が更けても灯りの絶えない、様々な屋台や店が立ち並ぶ賑やかな
門下生や術士たちは、平地に用意された邸に数人ずつ均等に配属されていて、怪異を鎮めるのが日々の務めとされている。
民に依頼されて成功報酬を貰うか、宗主から直々の命令を受けるか、もしくは無償で修練の一環として退治するかである。
北側は夜になれば
そこからさらに北に進むと湖水の都、
東側は整えられた道が続いていて、しばらく歩くと草原へと出る。そこから山を越え五日ほどで、豪華な楼閣が立ち並ぶ都、
東西南北に位置する四つの土地にそれぞれの一族が治める都があり、
そして北東側は大小様々な岩場に囲まれた広大な土地で、数百年前の大きな争いの爪痕が今もなお残っており、その一帯だけは常に薄暗く、淀んだ空と草の一本も育たない穢れた地が広がっている。
「
文には三、四体ほどの
特にこの場所は、かつて数千人の術士が無惨に命を落とした地であり、この土の下にはその亡骸が今も眠っているという。それが時を経て負の養分を吸い取り、
広い範囲で境界に巡らされた結界は、こちら側に入って来れないように張られていたが、
塵も積もれば綻びも生まれてしまうのが現状で、宗主や兄たち、それに手練の術士たちが定期的に修復していた。
「
暗闇の中に浮かんでいたのは、確かに青白い満月だった。しかし雲に隠れその姿を現した時、その色は奇妙な赤い月へと変わっていたのだ。毒々しい赤色に照らされていく月の周りの夜空には、星がまったく瞬いていなかった。
「なんだ、あの月······不吉すぎる」
怪訝そうに怪しげな月を見上げ、
皮肉にも大きな赤い満月が辺りを照らしているおかげで、暗くてよく見えていなかった場所がゆっくりと、よりはっきり見え始める。
嘘だろ、と思わず言葉を吞み込む。
そこには、つい先ほどまで確かになにも存在していなかった。
静寂と暗闇だけだった。
しかし一瞬にして十数体の
その光景はどこまでも悍ましく、恐怖を感じるには十分だった。