毎年この時期に行われる奉納祭のため、各一族従者を含めて十人前後ずつ、数日前にこの地を訪れることになっている。
それぞれに用意された邸は掃除も行き届いており、数日生活するくらいであれば足りないものはまずないだろう。客用の邸は本邸ほどではないが広い造りで部屋数も多いため、お付きの従者たちも不自由なく生活できる。一族ごとに用意されているので不要な争いもなかった。
背中に
(下手に仮面に触れられないから、なにかしてやろうにもできそうにない)
額から鼻の先までを覆う白い仮面。
生まれてすぐに宗主の手によって施されたもので、宗主と本人以外が触れれば強い力で弾かれ、触れた者、触れられた者のどちらも怪我をする。
触れた者だけならまだしも、
噂だけを聞けば、生まれた時顔が醜かったからとか、大きな痣を隠すためだとか、邪悪なものに呪われていてそれを封印するためだとか、様々である。
「
奉納祭では奉納舞を眺めながら、大人たちは酒を飲んだり一族同士の交流を深めたりするが、子どもたちは膳の上に用意された料理を食べ終えてしまうと、舞が終わるまで大人しくしているしかない。
今年の奉納祭は百年祭という節目で、いつもよりも豪華な飾りつけだったり、大きな舞台を特注していた。
それだけこの奉納祭を成功させようという気持ちが大きいのだろう。自分の本来の感情を完全に封じ、利を得る方を優先している。
「俺も少し横になる。お前はもう一つの寝台を借りるといい」
「······うん、」
疲れていたこともあり、しばらくすると眠気が襲ってきて、そのまま深い眠りについた。