「お前、なんで先に起きたのに俺を起こさない! ········っと、
部屋から大声でやってきたかと思えば、予想もしていなかった人物の姿を見つけ、背筋を伸ばし慌てて腕を囲って
ずかずかと大股でこちらにやってきた
「そんなに慌ててどうしたの? なにか面白いことでもあった?」
「どの口がっ······まさかお前、なにかしてないだろうな?」
最初の突っ込みこそ勢いがあった
返答の代わりにへへっと楽しそうに笑った後、くるりと器用にその腕を抜けて、ふたりの間に立った
(おい、ちょっと待て。
咄嗟に手を伸ばして制止しようとしたが、それは見事にかわされてしまう。
案の定、弾みながら
「命の恩人さんに、お礼をしなきゃね! なにがいい? 公子様っ」
ぐいぐいと引かれても微動だにしない公子に、気にせずに笑いかけて、犬のようにまとわりつく。馬鹿なことはやめろ、と
このやりとりにさえ公子は怒りも呆れもせず、ただ一点を見つめて、ひと呼吸し、ぽつりと呟いた。
「········では、一緒に
その言葉にふたりは同時に動きを止め、え?と瞬きをした。どういう意味だろう、と。そのままの意味だとしたら、唐突すぎる。
「え、ええっと、遊びに来てってこと、かな? すごく嬉しいけど、でも俺は、宗主の許可がないと
まさかの返答に思考が停止して固まっていたが、調子を取り戻して、
けして遊びに来てという意味ではないだろうが、解らないふりをして訊ね、もっともな理由を挙げてやんわりと断りを入れる。
「······可能なら、都を案内して欲しい」
表情が変わらないので冗談なのか本気なのか解らない。ただ、譲歩はしてくれたようなので、
「いいよ! 公子様はここにはいつまでいるの?」
「······明後日には発つ」
「わかった。じゃあ明日、迎えに来るねっ」
こくり、とゆっくり頷き、
(不思議なひとだな····俺にあんなこと言うなんて)
ああいう行動をとれば、変なやつと思われるか、嫌がられるのが普通だが、この青年はまったく気にした様子もなく、真面目に考えて答えてくれた。
「本当に、ありがとう。来てくれたのが、公子様でよかった。じゃあ、そろそろ俺たちは戻るね」
「ほら、ぼけっとしてないで、早く
「わ、わかってるっ」
部屋の方へ駆けて行った
そうしている間に、いつの間にか顔を出した朝陽の眩しさに、瞼を細める。長い夜が明け、いつもの朝が来る。
すぐに