始まりの
成長し十五になると山を下り、各地を巡礼。その地を守護する四神と契約を交わし、その命を国の守護のために尽くすことを誓約する。
始まりの
その頃のこの国は今以上に怪異で溢れており、妖獣や妖鬼も多く存在していた。当時の
しかしその巡礼は五百十数年前の
その打開策として行われるようになったのが、一年に一度の奉納祭。奉納舞を行うことで四神に祈りを捧げ、この地の守護を願うのだ。百年祭の四神奉納舞が特別なのは、かつて
各地を守護するそれぞれの四神の契約主は、最後の
故に、その地の穢れが溜まれば浄化が必要になる。それが百年祭の特別な四神奉納舞であった。通常の奉納舞との違いは、舞う時間が倍以上長いということと、霊力を大量に消耗するということ。
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中央に置かれた丸い舞台は、歩幅でいえば端から端まで縦横で五歩ずつくらいの幅だろうか。東西南北、東に青、西に白、南に赤、北に黒の宝玉が置かれおり、さらにその舞台の中央には、四神の長で中央を守護するという
奥の席に
奉納祭が始まると、古くから一族が代々読み上げてきた長い
半刻ほど形式的な儀式が厳かに行われた後、従者たちによって膳が運ばれてくる。綺麗に並べられた精進料理と、盃に注がれていく酒。先ほどまでの重たい雰囲気は消え、賑やかな声すら聞こえてくる。
奉納舞は四神に捧げるものだが、賑やかで華やかである方が良いと言われている。
「
「ああ。しかも百年に一度の特別な舞が見られるなんて、幸運だな」
宗主や母、兄たちの後ろに用意された席に、少し離れて並んで座る
「でも、
母にとって、彼はただの
(そもそもどうしてあいつは、そんなややこしいことをするんだ?)
母に目を付けられないように、というなら目立ったことなどせず、静かに大人しくしていた方が絶対に効果がある気がする。
(単に母上を苛つかせて、楽しんでいるだけだったりして)
あり得なくもないその考えに、
「おい、
近くの従者に小声だが怒鳴るような威圧感で、兄の
「む、迎えは間違いなく、時間通りに邸に向かったはずなのですが····、」
「どうしたの? 何か問題でも起きたの?」
「なにかあったのかしら?」
「ちょっと! だめですってばっ!! わーっ!? そっちはもっとだめですーっ!」
若い従者の慌てふためく声と、制止を求める声が響き渡った。
「えーなんでなんで? せっかく綺麗にしたんだから、みんなに見せたい~っ」
「いや、だからそれがだめなんですってっ」
遠慮なしに衣を掴み、若い従者はその場からなんとか離れようと、もうひとりの声の主を後ろに引きずる。広間の入り口にある太い柱の間から、その従者と騒ぎの中心にいる者の細い手と足がバタバタしているのが見えた。
なんだどうしたと、他の一族たちもそちらに注目し始める。
「どうしたの、何の騒ぎ?」
この広い広間でもよく通る声で、