村に着いたのは宗主が言った通り夕刻前だった。
「あ······あ··········これ、なんです?」
村全体を包むように白い糸が張り巡らされ、宙に浮くように逆さだったり、捻じれていたり曲がっていたりと。村人だっただろう者たちが、操り人形の如くその糸に括られていたのだ。
それはまるで蜘蛛の糸に捕まった虫のように、飾られた蝶のように。それぞれぴくりとも動くことなく村中に点々と存在していた。
「い、生きてますよね? こんな人数、全員、死んでなんか、いないですよ、ね?」
糸に括られた村人らしき者たちを、
「
「は、はい、そのつもりです、が······
「俺は遭遇したことがないが、こんな村規模で大勢の人間の精気を喰らうなんて、もしかして妖獣の仕業なんじゃ······」
妖獣は今はほとんどいないと言われているが、いないわけではなく、姿を滅多に現さないというだけだ。ただひとたび姿を現せば、村ひとつどころか都だってただでは済まないだろう。
(糸に括られてる村人たちは、まるで生きているようだが、精気がない。この強い妖気がこもった糸を見る限り鬼蜘蛛の仕業か?)
奉納祭のために
「······なにか、聞こえる」
「いや、なにも聞こえないぞ。ただの耳鳴りじゃないのか?」
聞こえる、と