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第20話 赤足のアシト~そして無双が始まった~

 ルナ・ナイトメアを瞬殺して5分後の修練場にて。


 彼女が沈黙したのを皮切りに、俺のアカデミー至上最高クラスである2年Sクラスを相手にした【アカアシ流足刀術】の無双が始まった。




「テメェ、よくもウチのルナ……許せねぇ!」




 覚悟しやがれ! と肩をいからせながら出て来た二番手は、例のゴリラのようなマッチョであった。


 マッチョは巨大なハルバードを片手で軽々と持ち上げると、俺に向かって大きく振りかぶった。


 防御のことは一切何も考えていない、玉砕覚悟の特攻スタイル。


 正直、嫌いじゃない。




「いいね。真正面からやり合おうってワケか」

「逃げるなよ? 男だろ?」

「逃げるかよ。男だからな」




 バチッ! と空気が帯電したかのように俺とマッチョの視線が絡み合う。


 それと同時に黒服の審判が第二戦目の開幕を告げるファンファーレを口にした。




「第二回戦【2年Sクラス】ゴリ・ライオネル 対 【2年Eクラス】アシト・アカアシ……始めっ!」

「遊びはナシだ! 数多の【魔女】をほふってきたライオネル家伝統の大技――魔女ちッ!」




 開戦の合図と同時に、唐竹割りの要領でゴリマッチョのハルバードが俺に向かって頭上から振り下ろされる。


 その一撃に生の全てを燃焼させているかのような気迫を前に、俺の細胞が一気にあわ立つ。


 まともに喰らえばタダでは済まない。


 ……面白いっ!




「【アカアシ流足刀術】壱ノ型『野太刀』ッ!」




 俺の持っている技術の中で最大の切れ味を誇る技で、ヤツの最強を打ち砕くべく右足を加速させた。


 上段回し蹴りの要領で放たれた俺の野太刀は、吸い込まれるようにゴリマッチョが振り下ろすハルバードへと伸びて行き、真正面から衝突。




 ――瞬間、ゴリマッチョのハルバードが俺の野太刀によってスパッ! と切断された。




「んなっ!? お、オイラのハルバードが……ッ!?」




 真っ二つに切断されたハルバードを見下ろしながら、膝から崩れ落ちるゴリマッチョ。


 その瞳には先ほどまで感じられた闘争心は微塵もなく、どこか俺を恐れているような色さえ浮かんでいた。




「どうする? まだやるかい?」

「ッ!? ひ、ひぃぃぃぃぃ~~~っ!?」




 ゴリマッチョが情けない声を上げながら、Sクラスの控室の方へと逃げるように駆け出していく。


 大きな身体を小さく丸めながら逃げていくその後ろ姿を見送りながら、俺は「審判、判定」と黒服の名を呼んだ。




「ご、ゴリ・ライオネルが敵前逃亡したため、勝者アシト・アカアシ!」




 再びドワッ! と修練場が歓声で包み込まれる。


 そんな歓声を切り裂くように、弾丸のような速度で双剣を携えた男子生徒が俺に肉薄してきた。


 そのまま流れるように俺の首筋めがけて双剣を突き立ててくる。


 それを紙一重で躱しながら、俺はいきなり攻撃してきた茶髪のチャラ男と距離をとった。


 チャラ男は驚いたように「へぇ~」と声をあげると、至極楽しそうな口調で口角を緩ませた。




「今のを躱すんだ? すごいね、君! この不意打ちの初手を躱したのは、今までユウトしか居なかったのに!」

「こ、コラッ!? なにをやっているガイア・フォースッ!? まだ試合は開始していないぞ!?」




 黒服の心配が茶髪のチャラ男に注意を促す。


 途端に双剣使いのチャラ男は「うるさいなぁ」と眉根を寄せながら黒服の主審をジロリッ! と睨んだ。




「ぬるいんだよ? ここが戦場ならもう戦いは始まってんだよ。審判ごときが茶々を入れるな」




 実にふてぶてしい態度で生意気な口を叩くチャラ男。


 なるほど。ここが戦場ならもう戦いは始まっているのか。


 俺はチャラ男の意識が黒服に向いている内に助走距離を確保しつつ、全力でチャラ男に向かって駆け出した。




「コイツ……ッ!?」

「オレっちを睨む前にやる事があるだろ? ほらっ、早く試合開始の合図をしろ」

「……第三回戦【2年Sクラス】ガイア・フォース 対 【2年Eクラス】アシト・アカアシ――始めっ!」

「よっしゃ! 双剣のガイア、いざ参る――ッ!?」




 チャラ男がようやく俺に意識を向けるが、もう遅い。


 俺の技は既に始まる前に完成している。




「【アカアシ流足刀術】さんノ型『落日』ッ!」




 空中で1回転しながらチャラ男の頭部めがけて踵を放り落とす。


 慌ててチャラ男も双剣を頭部へと構え、守りの姿勢に入るが……もう遅い。


 アカアシ流最大の攻撃力を誇る踵落としは、チャラ男の持っていた双剣を粉々に砕きながらヤツの頭部へと全力で振り下ろされ、




「んごぱっ!?」




 謎の悲鳴をあげながら、チャラ男は地面へとめり込んだ。


 ……再び水を打ったように静かになる修練場。


 耳が痛いほどの静寂が俺を、いや俺達を包み込んだ。




「これで3人」




 残りは4人。


 ようやく折り返しである。




「ほら主審、コール」

「ガイア・フォース戦闘不能により、勝者アシト・アカアシッ!」




 どこか嬉しそうな声音でそう高らかに黒服が宣言すると、




 ――ウオォォォォォォォォ~~~~ッッッ!?!?




 とギャラリー達の野太い声が地面を激しく揺らした。

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