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第2話:モテ期の始まり

それからというもの、僕の周りがなんだかおかしくなった


一時間目の数学の授業中、窓際の席に座っていると、廊下から誰かが手を振っているのが見えた


振り返ると、2年の麗奈先輩だった


陸上部のエースで、長い黒髪をポニーテールにした美人先輩だ


先輩は僕に気づくと、窓に向かって小さく手紙の形を作って見せた


そして胸に手を当てて、何かを伝えようとしている


「寿、授業中に何してる」


先生に注意されて、僕は慌てて前を向いた


でも気になって仕方ない


麗奈先輩が僕に?


昼休み、いつものように購買でパンを買おうとしていると、その麗奈先輩が現れた


「寿、一緒に弁当食べない?」


「は?先輩、僕なんかと?」


麗奈先輩は普段はクールで近づきがたい印象だったのに、今日は妙に優しい笑顔を浮かべている


「君のそのストレートな物言い、素敵だと思うの」


先輩は僕の肩にポンと手を置いて、ニッコリ笑った


その笑顔に教室中の男子が鼻血を出しそうになってるのが見えた


普段なら先輩なんて雲の上の存在なのに


「いや、でも僕、先輩みたいな美人さんと一緒にいたら場違いすぎて・・・」


「そんなことない!君はありのままでいいのよ」


麗奈先輩は僕の手を取って、屋上に向かって歩き始めた


「え、え、先輩?」


「屋上で2人きりで食べましょう」


先輩の手は柔らかくて温かかった


でも僕は混乱していた


何で急に?


屋上に着くと、先輩は持参した豪華な弁当を広げた


卵焼きやから揚げ、きれいに飾り付けられたおかずがたくさん入っている


「すげー、手作りですか?」


「ええ、今朝早起きして作ったの」


先輩は恥ずかしそうに微笑んだ


「でも僕、購買のメロンパン一個で済ませる予定だったんですが・・・」


「それじゃダメよ、ちゃんと栄養取らないと」


先輩は僕の隣に座って、お箸で卵焼きを取って僕の口元に持ってきた


「あーん」


「え?え?」


僕の顔が真っ赤になった


こんなの初めてだ


「美味しい?」


「は、はい・・・」


卵焼きは甘くて美味しかった


でも僕の心臓はバクバクしていた


なんで先輩が僕に?


「寿って、いつも一人でお昼食べてるのね」


「あ、はい」


「寂しくない?」


先輩は僕の顔を覗き込んだ


近い


すごく近い


先輩のいい匂いがする


「べ、別に寂しくないです」


「そう・・・でも、よかったら今度から一緒に食べない?」


「え?」


「私、寿と話してると楽しいの、君の飾らない性格が好き」


先輩は僕の手をそっと握った


「せ、先輩・・・」


僕は完全にパニック状態だった


放課後も異変は続いた


図書委員の静香さんが僕のところにやってきた


静香さんは眼鏡をかけた知的美人で、いつも本に囲まれている


「寿さん、この本、よかったら読んでみて」


手渡されたのは


『二人の距離の概算』


という恋愛小説だった


表紙には制服を着た2人の女性が見つめ合っている絵が描かれている


「え、えーっと、これって・・・」


「私たちみたいな関係の物語よ」


静香さんは眼鏡をクイッと上げて、意味深な微笑みを浮かべた


「僕たち?」


「そう、最初は友達だった二人が、だんだんと特別な感情を抱くようになって・・・」


静香さんは僕に近づいてきた


「寿さんの無骨だけど純粋なところ、とても魅力的だと思うの」


「む、無骨って・・・」


「私、ずっと寿さんのことを見てたの、授業中に一生懸命ノートを取ってる姿、友達と笑ってる姿、すべてが輝いて見えた」


静香さんは僕の肩に手を置いた


「今度、一緒に図書館で勉強しない?私が寿さんに色々教えてあげる」


「べ、勉強を?」


「勉強も・・・それ以外のことも」


静香さんの声が少し艶っぽく聞こえた


僕の頭がこんがらがりそうになった


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