翌日から、彼女たちのアプローチはさらにエスカレートした
朝、登校すると、下駄箱に愛美からのプレゼントが入っていた
開けてみると、僕が好きそうなバンドのCDだった
「おはよ、寿」
愛美が現れた
今日はいつもより可愛い制服の着こなしをしている
「これ、アタシの好きなバンドのCD、アンタも気に入ると思うの」
「ありがとう・・・でも、こんな高いもの」
「いいのよ、アンタに喜んでもらえるなら」
愛美は僕の手を握った
「今度、一緒にライブ行かない?アンタと一緒なら、もっと音楽が楽しめそう」
1時間目の授業中、雅子先輩から呼び出しの手紙が届いた
「放課後、演劇部室で待ってます。特別な演技をお見せしたいのです」
放課後、演劇部室に向かうと、薄暗い部屋に雅子先輩1人が立っていた
スポットライトが先輩を照らしている
「寿さん、来てくれたのね」
先輩は舞台衣装を着ていた
中世の貴族のようなドレスだ
「今日は、あなたのために特別な演技をします」
雅子先輩は突然、情熱的な恋の詩を朗読し始めた
「ああ、愛しい人よ・・・あなたなしでは生きていけない・・・」
先輩の演技は本格的で、僕は圧倒された
でも、詩の内容が明らかに僕に向けられている
「寿さん、あなたは私のミューズです、あなたがいるからこそ、私はより良い演技ができるのです」
先輩は僕の前に跪いた
「どうか、私の恋人役を演じてくれませんか?」
「え?」
「今度の文化祭で、恋愛劇を上演するんです、あなたなら、きっと素晴らしい相手役になってくれる」
僕は混乱した
演技なのか、本気なのかわからない
昼休み、図書館に行くと、静香さんが待っていた
「寿さん、こちらへ」
静香さんは僕を一番奥の個室に案内した
「今日は、特別な本を紹介したいの」
テーブルには、恋愛に関する本がたくさん並んでいた
「これは心理学の本、人がどうやって恋に落ちるかが書かれています」
静香さんは本を開いて説明した
「例えば、吊り橋効果、危険な状況で一緒にいると、恋愛感情が芽生えやすくなるという現象です」
「へー」
「あとは、単純接触効果、頻繁に会う人に好意を抱きやすくなるという・・・」
静香さんは僕の隣に座った
とても近い
「寿さん、私たちはよく図書館で会いますよね?」
「あ、はい・・・」
「それは偶然ではありません、私が意図的に、寿さんの図書館利用パターンを調べて・・・」
「調べて?」
「あ、いえ、その・・観察していたんです」
静香さんは頬を赤らめた
「寿さんのことをもっと知りたくて、つい・・・」
夕方、生徒会室に呼び出された
千尋が一人で待っていた
「寿さん、お疲れ様です」
千尋はお茶を入れてくれた
「実は、寿さんに提案があります」
「提案?」
「生徒会の仕事を手伝ってもらえませんか?」
「僕が?でも僕、成績も良くないし、遅刻も多いし・・」
「それでもいいんです、寿さんには、他の人にはない魅力があります」
千尋は僕の手を取った
「生徒会のメンバーは、みんな優等生すぎて、時々息が詰まることがあるんです・・・でも寿さんがいてくれたら、もっと風通しの良い組織になると思うの」
「でも・・・」
「それに、寿さんと一緒に仕事をしていたら、私も楽しく活動できそうです」
千尋は微笑んだ
「今度の休日、一緒に学校見学のパンフレット作りをしませんか?2人きりで、じっくりと・・・」
体育の授業では、麗奈先輩が特別コーチとして現れた
「今日は陸上の基礎を教えます」
先輩は僕の隣で走り方を指導してくれた
「寿、腕の振り方が違う、こうよ」
先輩は僕の腕を持って、正しいフォームを教えてくれた
先輩の手は柔らかくて、いい匂いがした
「今度、一緒に朝練しない?早起きは辛いけど、寿となら頑張れそう」
放課後、美月さんから本を借りて帰る途中、彼女に呼び止められた
「寿さん、今度の土曜日、空いてますか?」
「土曜日?」
「新刊書店で、サイン会があるんです、私の好きな作家さんの」
美月さんは嬉しそうに話した
「よかったら、一緒に行きませんか?その後、カフェでお茶でもしながら、本の感想を話し合いましょう」
6人からの熱烈なアプローチに、僕の頭はパンク寸前だった