月曜日の朝、事態はさらに深刻になった
教室の下駄箱の前で、靴を履き替えていると、千尋が現れた
「寿さん、おはようございます」
「あ、おはようございます」
「土曜日はお疲れ様でした、楽しい時間を過ごされたようですね」
千尋の声に少し棘があった
「あ、はい・・・」
「私からの依頼は、お忙しくて受けられなかったようですが」
「すみません、約束があって・・・」
「約束・・・そうですね、私との約束より、美月さんとの約束の方が大切だったのですね」
千尋は微笑んでいたが、目は笑っていなかった
「そ、そういうわけでは・・・」
「寿さん、はっきりお聞きします」
千尋は僕の手を取った
「私のこと、どう思っていますか?」
「え?」
「私は寿さんのことが好きです!!とても好きです!!!だから、寿さんの気持ちも知りたいんです」
千尋の真剣な眼差しに、僕は困惑した
「千尋さん・・・僕は・・・」
その時、愛美が現れた
「おはよー、寿」
愛美は千尋を無視して僕に抱きついてきた
「昨日はお疲れ様、美月ちゃんと雅子先輩も一緒だったみたいね」
「あ、うん・・・」
「でも、アタシとは二人きりの時間が少なかったわね」
愛美は僕の腕を引っ張った
「今度は絶対に2人きりで会いましょ」
「愛美さん」
千尋が口を開いた
「寿さんと私が話をしていたのですが」
「あら、そうなの?でも寿はアタシと約束があるの」
「約束?」
「そうよ、昨日約束したのよね、寿?」
愛美は僕を見た
でも僕は約束した覚えがない
「え、えーっと・・・」
2人の視線が僕に集中した
昼休み、屋上に逃げると、今度は麗奈先輩が待っていた
「寿、逃げちゃダメよ」
先輩は優しく微笑んだ
「みんな、寿のことが好きなのよ」
「先輩・・・」
「でも私は違う」
「え?」
「私は寿を愛してるの」
先輩は僕の顔を両手で挟んだ
「好きと愛してるは違うでしょ?私は寿を心から愛してる」
「せ、先輩・・・」
「寿の笑顔、困った顔、全部愛してる、寿がいない世界なんて考えられない」
先輩の顔が近づいてくる
「私と付き合って」
その時、屋上の扉が開いた
雅子先輩だった
「あら、麗奈さんもいらしたのね」
「雅子・・・」
二人の先輩が向き合った
何だか電気が走ったような緊張感があった
「寿さん、私もあなたに大切なお話があります」
雅子先輩は僕の前に立った
「私の心を受け取ってください」
雅子先輩は懐から手紙を取り出した
「これは私の愛の詩です、寿さんへの想いを込めて書きました」
「詩?」
「はい・・・朗読させていただきます」
雅子先輩は立ち上がって、情熱的に詩を朗読し始めた
「ああ、愛しき寿さくらよ
あなたの無骨な美しさに
私の心は奪われてしまった
あなたの隣で過ごす時間こそが
私の人生で最も輝いている瞬間
どうか私の愛を受け入れて」
朗読が終わると、雅子先輩は僕の前に跪いた
「寿さん、私と永遠の愛を誓いませんか?」
「え、永遠って・・・」
麗奈先輩が前に出た
「雅子、それはやりすぎよ」
「愛に限度はありません」
「でも寿を困らせるつもり?」
「私は本気です」
2人の先輩が対峙している間に、僕はそっと屋上から逃げ出した
放課後、図書館に避難すると、静香さんが待っていた
「寿さん、お疲れ様です」
「あ、静香さん・・・」
「大変でしたね」
静香さんは僕に椅子を勧めた
「みなさんの気持ち、痛いほどわかります」
「え?」
「だって私も、寿さんのことが大好きですから」
静香さんは眼鏡を外した
眼鏡を外した静香さんは、いつもよりずっと美人に見えた
「でも私は、寿さんを困らせたくありません」
「静香さん・・・」
「だから提案があります」
静香さんは僕の手を取った
「私と一緒に図書館で過ごしませんか?静かな環境で、二人だけの時間を」
「図書館で?」
「はい。本を読みながら、お互いの距離を縮めていきましょう」
静香さんは僕の耳元で囁いた
「きっと素敵な時間になりますよ」
その夜、家で1人になってやっと落ち着けた。でも、6人の顔が頭から離れない
みんないい人だ
美月さんの純粋さ
愛美の積極性
雅子先輩の情熱
千尋の真面目さ
麗奈先輩の優しさ
静香さんの知性
どの人も魅力的だった
でも僕は、彼女たちを恋愛対象として見ることができない
どうしたらいいんだろう?