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第2話 『生徒会長の膝枕と、超甘えん坊問題』

 入学式が終わって数日。

 神代学園の生活にも、ほんの少しだけ慣れてきた……と思ったのは完全な勘違いだった。


「風間ユウトくん、すぐに生徒会室まで来てください」


 放送が鳴ったのは昼休み。

 俺の名前だけをフルネームで読み上げてきやがった。


「おいおい……何やらかしたんだ俺……」


 周囲のクラスメイトが「え?」「何したの?」とざわつく中、俺は肩をすぼめて、生徒会室へと向かう。


 そして、ドアを開けた瞬間。


「よく来たね、ユウトくん!」


 そこにいたのは、完璧すぎる美貌を持った女子生徒だった。


 ふわりと揺れる茶色の髪、きらきらと輝く琥珀色の瞳。

 整った顔立ちに、気品ある制服姿。そして……


「私は生徒会長の鏡ヶ原つかさ(かがみがはら・つかさ)。よろしくね、ユウトくん♪」


 そう、まるでアイドルのように笑った、その直後だった。


「さて、膝枕の時間ね。さ、ここにおいで♪」

「…………は?」


 いやいやいや、俺、まだ何もしてねえよ!?

 書類提出もしてないし、名前覚えてもらうような目立ち方もしてないはずだぞ!?


「私ね……この学園に入ってから、ずっと“運命の後輩”を探してたの」

「いや、先輩が運命を押し付けてくるなよ!!」


「ふふっ、ツッコミも合格♡ じゃ、遠慮なく……」


つかさはふわりとスカートの裾を整えると、俺の頭を抱いて、

その膝へと


「いやああああああっ!? やめろおおおお!!」


 逃げようとする俺に、背後から鍵を閉める音。

 えっ、なんで鍵閉めたの!? 俺まだ罪状すら知らされてないよ!?


「ユウトくん……わかってる? これは“儀式”なのよ。膝枕って」

「何の!? 何の儀式なんですか会長ぉおお!!」


「信頼の証、愛情の育成、そしてちょっとした癒やし♪」

「万能すぎるだろその膝枕!!」


 結果。

 逃げられず、俺は大人しく(というか抵抗むなしく)つかさの膝で寝かされた。


「ふふ……ユウトくん、かわいい顔してるのね」

「そんなこと言いながら髪撫でないでください会長……」


「ねぇ、今日から毎日、来てくれる?」

「えっ……?」


「ほら、私って“しっかり者”だから……いつも気を張ってて、つらくなっちゃうの。でも、甘える相手がいれば、もっとがんばれる気がして……」


 甘えん坊、発動。


 しっかり者会長、という看板の裏に潜む重度の甘えん坊属性。

 その全てが、俺に向かって放たれ始めていた。


 そのとき、突然ドアが開く。


「会長、いけません。ユウト様は……ご主人様ですので」


 完璧な礼儀作法、銀の髪をポニーテールに束ねた、まるで執事系ヒロインのような少女が登場した。


「お待たせしました。私は春日井メイ。本日より、ご主人様の専属メイドとして、転校して参りました」


「「…………えぇぇぇぇぇ!?」」


 俺のツッコミが間に合わない。

 この学園、やっぱりどこかおかしい、いや、俺の周りだけ次元が違う気がするんだ。


 こうして、メイド型転校生が加わり、俺の頭痛とツッコミとモテ期が、さらに加速することになる。


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