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第7話 「合法圧力の嵐、そして9歳CEOの秘密」

霞ヶ関冷人──

厚生労働省の裏組織「雇用維持局」のエリート官僚は、タブレットを前に冷ややかに笑った。


「合法的に、奴らを締め上げる」


法の網の目を巧みにくぐり、失業保険の申請を厳格化、退職代行業者への調査も開始。


「退職代行“ヤ退くん”の顧客は次々に申請を却下され、生活困窮へと追い込まれるだろう」


その報告書を冷人は部下に指示した。


「数字が示す通り、労働人口の維持こそ国家安定の要だ。妥協は許されん」


だが、そんな冷人にも心の奥底に弱点があった。


「なぜ、あの9歳の看板娘だけは……どうしても怖いのか」


一方、赤ジャージの獅堂まゆらは事務所の床に寝転がり、リュウとハルと打ち合わせ中。


「最近、顧客からの連絡が減ってるのは、合法圧力のせいだろうな」


リュウがスマホの画面を指さした。


「失業保険が下りない、契約解除のトラブル増加、社会保障の圧力もヤバい」


ハルはパソコンをカタカタ叩きながら真剣な顔。


「このままだと、本当に困窮者が続出する。ヤ退くんの意味がなくなる」


まゆらは大きく息を吸った。


「でも、ここで挫けたら終わりよ。霞ヶ関冷人も必ず穴がある。私たちも“合法”で戦う方法を見つける」


そこへ、あの9歳CEO・しのぶちゃんが元気よく入ってきた。


「みんな、秘密の話があるよ!」


リュウとハルは顔を見合わせた。


「秘密って?」


しのぶちゃんは事務所のホワイトボードに小さなメモを書き込んだ。


「おでん屋の地下に、昔からの秘密基地があるんだよ。そこには霞ヶ関の法律も、官僚の陰謀も届かない」


まゆらは目を輝かせた。


「秘密基地?それがあれば、私たちも戦いやすくなるかも」


その夜、まゆらチームは秘密基地へ向かった。


狭い階段を降りると、壁に古いポスターや奇妙な機械が並んでいる。


「これ全部、元ヤクザや元労働者の“逃げ場”の証拠だよ」


しのぶちゃんが案内したのは、廃墟同然の空間。


「ここで生活を立て直した人たちがたくさんいる」


リュウはつぶやいた。


「こんな場所があったなんて……まさに社会の闇の中の光だな」


ハルは黙って機械をいじり始めた。


「この装置で、霞ヶ関の監視システムをかく乱できるかもしれない」


翌朝、冷人は霞ヶ関の高層ビルで報告を受けていた。


「彼らの動きは予想以上に巧妙です」


部下が冷静に報告する。


「秘密基地の存在は確認できませんが、監視網に異常が出ています」


冷人の表情が険しくなる。


「許せん……あの9歳CEOが背後にいる限り、我々の手は届かないのか」


「冷人さん、どうしますか?」


「合法的に、さらなる締め付けを行う。しかし、逆にこちらの情報が漏れている可能性もある。用心しろ」


数日後、まゆらたちは新たな作戦を練っていた。


「霞ヶ関の締め付けが強まったけど、秘密基地のおかげで情報は筒抜けじゃない」


「それに、しのぶちゃんが怖がらせるだけで霞ヶ関の冷人を動揺させてる」


リュウが笑う。


「そういや、あの9歳CEO、何か隠してる気がするんだよな」


「秘密基地の地下には、もっとすごい何かがあるかもしれない」


まゆらの瞳は燃えていた。


「次は私たちが仕掛ける番よ。合法の壁をぶち破る!」

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