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第20話 「ランドセル就労支援制度」

――午前9時、厚労省第13庁舎。


春日ハルは、教育庁からのスカウトにより、研修に参加していた。


「自己分析ワークショップ」


講師の指導のもと、ハルはクレヨンを手に取り、白紙の紙に向かった。


「自分を動物に例えると?」


ハルは、かつての厚労省での出来事を思い出しながら、紙に何かを描き始めた。


「……」


描き終えた紙には、黒い影のようなものが描かれていた。


講師がそれを見て、声をかけた。


「これは……何の動物ですか?」


ハルは答えた。


「……影です。自分の過去の影。」


講師は微笑みながら言った。


「素晴らしい自己洞察ですね。」


ハルは、内心で苦笑した。


――一方、灯は、ランドセル就労支援制度の被害者として、児童相談所に保護されていた。


「お名前は?」


「灯です。」


「年齢は?」


「……」


灯は答えられなかった。


職員は、彼のランドセルを見て、言った。


「ランドセルを背負っているということは、小学生ですね。」


灯は、否定しようとしたが、言葉が出なかった。


――その頃、田淵は、労働基準監督署に向かっていた。


「再就職代行事務所の労働環境について、通報したい。」


職員は、田淵の話を聞きながら、メモを取った。


「具体的には、どのような問題が?」


「過重労働、賃金未払い、パワハラ……」


職員は、頷きながら言った。


「調査を進めます。」


田淵は、満足げに頷いた。


――再就職代行事務所では、まゆらが、灯の行方を心配していた。そう、まゆらたちは、退職代行から再就職代行に移行しつつあった。


「灯、どこに行ったのかしら……」


ハルが戻ってきて、まゆらに声をかけた。


「まゆらさん、灯が児童相談所に保護されているらしいです。」


まゆらは驚き、すぐに行動を起こした。


「すぐに迎えに行かないと!」


――児童相談所で、まゆらとハルは、灯と再会した。


「灯、大丈夫だった?」


灯は、涙を浮かべながら頷いた。


「ごめんなさい、ランドセル就労証をなくして……」


まゆらは、灯を抱きしめた。


「もう大丈夫よ。」


――その夜、再就職代行事務所では、まゆら、ハル、灯、田淵が集まっていた。


「これから、どうする?」


まゆらが問いかけた。


ハルは答えた。


「ランドセル就労支援制度の問題点を明らかにし、改善を求めるべきです。」


田淵も頷いた。


「信仰と就労の狭間で苦しむ人々のためにも、行動を起こすべきだ。」


まゆらは、決意を込めて言った。


「私たちの再就職代行事務所が、その先駆けとなりましょう。」


――物語は、新たな展開を迎えようとしていた。

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