――午前9時、厚労省第13庁舎。
春日ハルは、教育庁からのスカウトにより、研修に参加していた。
「自己分析ワークショップ」
講師の指導のもと、ハルはクレヨンを手に取り、白紙の紙に向かった。
「自分を動物に例えると?」
ハルは、かつての厚労省での出来事を思い出しながら、紙に何かを描き始めた。
「……」
描き終えた紙には、黒い影のようなものが描かれていた。
講師がそれを見て、声をかけた。
「これは……何の動物ですか?」
ハルは答えた。
「……影です。自分の過去の影。」
講師は微笑みながら言った。
「素晴らしい自己洞察ですね。」
ハルは、内心で苦笑した。
――一方、灯は、ランドセル就労支援制度の被害者として、児童相談所に保護されていた。
「お名前は?」
「灯です。」
「年齢は?」
「……」
灯は答えられなかった。
職員は、彼のランドセルを見て、言った。
「ランドセルを背負っているということは、小学生ですね。」
灯は、否定しようとしたが、言葉が出なかった。
――その頃、田淵は、労働基準監督署に向かっていた。
「再就職代行事務所の労働環境について、通報したい。」
職員は、田淵の話を聞きながら、メモを取った。
「具体的には、どのような問題が?」
「過重労働、賃金未払い、パワハラ……」
職員は、頷きながら言った。
「調査を進めます。」
田淵は、満足げに頷いた。
――再就職代行事務所では、まゆらが、灯の行方を心配していた。そう、まゆらたちは、退職代行から再就職代行に移行しつつあった。
「灯、どこに行ったのかしら……」
ハルが戻ってきて、まゆらに声をかけた。
「まゆらさん、灯が児童相談所に保護されているらしいです。」
まゆらは驚き、すぐに行動を起こした。
「すぐに迎えに行かないと!」
――児童相談所で、まゆらとハルは、灯と再会した。
「灯、大丈夫だった?」
灯は、涙を浮かべながら頷いた。
「ごめんなさい、ランドセル就労証をなくして……」
まゆらは、灯を抱きしめた。
「もう大丈夫よ。」
――その夜、再就職代行事務所では、まゆら、ハル、灯、田淵が集まっていた。
「これから、どうする?」
まゆらが問いかけた。
ハルは答えた。
「ランドセル就労支援制度の問題点を明らかにし、改善を求めるべきです。」
田淵も頷いた。
「信仰と就労の狭間で苦しむ人々のためにも、行動を起こすべきだ。」
まゆらは、決意を込めて言った。
「私たちの再就職代行事務所が、その先駆けとなりましょう。」
――物語は、新たな展開を迎えようとしていた。