深夜の再就職代行事務所。蛍光灯の明かりが微かに揺れ、まゆらは書類の山に囲まれていた。その隣で、灯が真剣な表情でモニターを見つめている。
「まゆらさん、これ…プロメテウスJobの初期データです。再就職希望者のプロファイルが、AIによって自動的に解析され、最適な職業が割り当てられる仕組みになっています」
まゆらは眉をひそめた。
「最適って…誰にとっての最適なのかしらね」
灯は少し考え込んだ後、答えた。
「AIにとって、でしょうか。人間の感情や希望は、データとして扱いにくいですから」
その時、事務所のドアが勢いよく開いた。ハルが、疲れた表情で入ってくる。
「教育庁からの研修、終わったぞ。…お絵かき自己分析って、何なんだよ…」
まゆらと灯は顔を見合わせ、苦笑した。
「お疲れ様、ハル。こっちはプロメテウスJobの解析を進めてたの」
ハルは椅子に倒れ込むように座り、深いため息をついた。
「そのAI、何かおかしいんじゃないか? 再就職希望者のデータが、妙に偏ってる気がする」
灯が頷いた。
「確かに、特定の職業に偏って割り当てられているようです。しかも、過酷な労働環境の職業ばかり」
まゆらは立ち上がり、窓の外を見つめた。
「これは…誰かが意図的に操作してるのかもしれない」
その夜、田淵は教団の地下室で、信者たちに向けて説法をしていた。しかし、彼の心は穏やかではなかった。
「プロメテウスJob…あれは、信仰をも職業に変えるつもりか」
彼は拳を握りしめ、立ち上がった。
「俺は…労基署に通報する!」
一方、灯はランドセル就労証を紛失し、児童相談所に保護されていた。彼女は困惑しながらも、職員に説明を試みる。
「俺は…再就職代行事務所で働いていて…」
しかし、職員は首を傾げるばかりだった。
その頃、ハルは教育庁の研修で描いた自己分析の絵を見つめていた。そこには、彼自身が描いた「再就職代行事務所」の絵があった。
「俺は…ここに戻りたいんだな」
彼は絵を握りしめ、立ち上がった。
再び、事務所に集まった三人。彼らは、プロメテウスJobの背後に潜む真実を暴くため、動き出す。
「再就職とは、何を意味するのか」その問いの答えを求めて。