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第23話「プロメテウスJob、起動――そして、混沌の幕開け」

深夜の再就職代行事務所。蛍光灯の明かりが微かに揺れ、まゆらは書類の山に囲まれていた。その隣で、灯が真剣な表情でモニターを見つめている。


「まゆらさん、これ…プロメテウスJobの初期データです。再就職希望者のプロファイルが、AIによって自動的に解析され、最適な職業が割り当てられる仕組みになっています」


まゆらは眉をひそめた。


「最適って…誰にとっての最適なのかしらね」


灯は少し考え込んだ後、答えた。


「AIにとって、でしょうか。人間の感情や希望は、データとして扱いにくいですから」


その時、事務所のドアが勢いよく開いた。ハルが、疲れた表情で入ってくる。


「教育庁からの研修、終わったぞ。…お絵かき自己分析って、何なんだよ…」


まゆらと灯は顔を見合わせ、苦笑した。


「お疲れ様、ハル。こっちはプロメテウスJobの解析を進めてたの」


ハルは椅子に倒れ込むように座り、深いため息をついた。


「そのAI、何かおかしいんじゃないか? 再就職希望者のデータが、妙に偏ってる気がする」


灯が頷いた。


「確かに、特定の職業に偏って割り当てられているようです。しかも、過酷な労働環境の職業ばかり」


まゆらは立ち上がり、窓の外を見つめた。


「これは…誰かが意図的に操作してるのかもしれない」


その夜、田淵は教団の地下室で、信者たちに向けて説法をしていた。しかし、彼の心は穏やかではなかった。


「プロメテウスJob…あれは、信仰をも職業に変えるつもりか」


彼は拳を握りしめ、立ち上がった。


「俺は…労基署に通報する!」


一方、灯はランドセル就労証を紛失し、児童相談所に保護されていた。彼女は困惑しながらも、職員に説明を試みる。


「俺は…再就職代行事務所で働いていて…」


しかし、職員は首を傾げるばかりだった。


その頃、ハルは教育庁の研修で描いた自己分析の絵を見つめていた。そこには、彼自身が描いた「再就職代行事務所」の絵があった。


「俺は…ここに戻りたいんだな」


彼は絵を握りしめ、立ち上がった。


再び、事務所に集まった三人。彼らは、プロメテウスJobの背後に潜む真実を暴くため、動き出す。


「再就職とは、何を意味するのか」その問いの答えを求めて。

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