目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

三部27話 親切お兄さんは鉄人形に襲われましたとさ

 カイン達に近づいてくるエーテの動きはひどく遅かった。


 ウソーの思考を〈模写〉したエーテは、カインの恐怖心を少しでも煽ろうとしているように見える。


 その生まれた時間をタルトは見逃さず〈広範囲鑑定〉を行う。

 淡く白い光がエーテ達を包み込む。

 ピクリとタルトの肩が小さく動き、カインに話し掛ける。


「カインさん。エーテ、思考や動きはあの人を模写しているかもしれませんが、ステータスはグレンさん並みです。そして、あの身体なので硬さはグレンさん以上です」


 ソロ冒険者であり、竜殺しのグレンと同じレベルといわれ、カイン達にもより緊張感が走る。


「で、もう一つ。気になることが……」


 タルトが不安そうな顔でこちらをチラチラ見ながらカインに話し掛けているのを見てウソーはほくそ笑む。


(怯えろ怯えろ。俺が味わった以上の恐怖と混乱をお前らにくれてやる!)


「エーテ、止まれ」


 ウソーがそう一言だけ告げると、カイン達にゆっくり近づいていたエーテの動きがピタリと止まる。

 カインは、エーテが止まったことに驚きながらウソーを見ると、ウソーは大きな溜め息を吐き、口を開く。


「力の差は明らか。こうなると弱いものいじめだ。なんだか随分と可哀想に見えてきた。もういい。見逃してやるから何処へでも行くがいい」


 ウソーがエーテを手招きするとカイン達から離れていく。


「ホ、ホントですか!?」


 タルトが心から安堵したように息を吐く。

 すると、ウソーはニコリと笑い、


「ははは……嘘だよ!!」


 そう言い放つと、カイン達の左右背後から鉄人形が襲う。


「ほんぎゃあああ!」


 カインは予想していたのだろう。

 叫ぶタルトを抱えながら〈潤滑〉によりエーテ達の攻撃を躱す。

 マコットやメメもカインに合わせて動く。


 位置が入れ替わり、ウソーと最初のエーテと、カイン達の間に三体のエーテが立ちはだかる。

 ウソーは満足そうに笑っている。


「ふうむ、俺の有能な部下となる奴らに名前がないのはかわいそうだし、不便か。よし、お前ら三匹は、ミーテ、キーテ、イーテだ! お前らの力で奴らを潰せ!」


 ミーテ、キーテ、イーテ、三匹のエーテがゆらりと動いたかと思うと散開し、再びカイン達を襲う。


「逃げられない! 覚悟を決めて、戦う!」


 カインの叫びにタルト達は頷き、背中合わせに構える。

 鉄人形と魔工技師達の戦いが始まる。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?