カインとシアが二人だけの1日の始まりに乗った魔導列車が辿り着いたのは、商業地区だった。
商業地区では、露店を二人で見て回った。
食べ物を買い歩き食いをしながら、様々なものを見て回った。
シアはカインと腕を組みながら、楽しそうに引っ張り回していた。
「あのね、カインさん。私、自分で言うのもなんだけど、それなりに容姿はいいほうだと思うの」
それなりどころか絶世の美女と言えるのだが、それを言うともっと照れる結果になりそうでカインは曖昧に頷いた。
「でもね、カインさんといるとレイルではみんなカインさんの方見てる! あはは! なんだかそれが嬉しくって!」
シアは大きく口をあけて笑った。
「こんな風に笑うことも、歩き食べも、露店を回ることも夢だった。城を出て、冒険者になってやってみたけど、今日ほど夢みたいな日はないわ」
そう言いながら串餅をかじりながら笑うシアは、今までのどの瞬間よりも可愛く美しく、カインは柔らかく微笑んだ。
それを見たシアは、ふらりと倒れそうになり、慌ててカインに支えられる。
「だ、大丈夫?」
「だだだ、大丈夫ですわ! わたくしは大丈夫ですわ!」
全然大丈夫じゃなさそうだとカインは思ったが、シアはそのままスタスタと歩いて行ってしまう。
真っ赤な顔をカインは心配したが、シアは溶けるからと避けつづけた。
露店には、マコットの作った玩具も並んでいた。
あの冒険以降マコットは玩具をつくり始めた。
まだ、人前に出るのは苦手な為に、冒険者ギルドで依頼を出し、信頼できる人物に販売を託していた。
そんな玩具の中でシアは一つをずっと眺めていた。
「それ、は?」
「これ、カインさんに似てない?」
それは、木で出来た黒髪の男と鵞鳥の玩具だった。
魔力を注ぐと、男が鵞鳥の頭を撫でるだけというただそれだけのものだった。
「似てる、かな?」
「似てる似てる! 頭の撫で方がラッタを撫でる時そっくり。嘘だと思うなら、撫でてみて」
「うん……」
シアに促され、頭を撫でた、時にカインはハッとする。
気づけば、シアの頭を撫でていた。
この玩具の原理はどういう術式だろうかと考えながらだった為に思わず、言われた通りに動いてしまっていたのだ。
「……どう!?」
無邪気な笑顔でシアが迫ってくる。
「わ、わからない……」
「えー!」
シアはケラケラ笑っていた。
カインは元気に笑うシアが嬉しくて、照れはすぐにおさまり、つられて笑った。
そして、その玩具を買ったりしながら露店を回り終えると、また、魔導列車に乗り、次は服屋へ。
カインとシアは貴族服に身を包み高級なレストランへ辿り着いた。
「え……?」
「さ、カインさん、大人の夜を過ごしましょう」
シアが妖しく笑い、カインは顔をひきつらせ笑っていた。