「くそがっ! 消せ! 消せっ! ……はあはあ」
バリィが画を消すよう声を荒げる。
「ふざけやがって……馬鹿にしやがって……!」
「バリィ……もう、負け、を、認め、たら、どう?」
カインが諭すように話しかけるが、バリィは血走った目でカインを睨みつける。
「お前はいつもそうだ! 俺を! 俺を馬鹿にしやがって! ははは! ああそうだな! お前はいつもそうだ! だから、俺はお前をつぶしたかった! 徹底的に! でももういい! お前は殺す! 殺して殺して殺しつくしてやる!」
バリィが手を上げると、10体近くのエーテが現れる。
「はっはあ……! エーテがあれだけとは言ってないよなあ。たった一人で来てお前に倒せるわけがない……!」
背後の10体のエーテ、そして、エーテキング、ティナス、フリーダに囲まれながら見下すようにカインを見て嗤うバリィ。
「バリィ……俺、は、多分、お前のことを、一番知ってる」
「だからなんだ!?」
「だから、お前、は、人の嫌がること、が、好きで、誰、よりも、臆病だ」
「はあ!?」
「だから、俺も、そんなお前を、徹底的に、潰す。お前のように」
カインが懐から笛を出す。
「それは……!」
フリーダがその笛に気づき焦り始める。
「戦おう、徹底的に」
カインが笛を吹く。
すると、カインの後ろの空間に風穴があき、大きな道具袋を抱えたラッタが飛び込んでくる。
「漸く出番だな! カインヌ!!」
「ネズミ? は! ネズミ一匹連れてきて何をしようって……」
空間に空いたネズミ穴に手が差し込まれる。
そして、穴の奥から複数詠唱の声が聞こえ、穴がどんどんと広がっていく。
「ぬううううううん!」
「は?」
人が通れるほどの大きさに広がった穴に手をかけていたヌルド王が現れる。
「はっはっは! 待ちかねたぞ! カイン!」
「はあ?」
それに続いて、ハニキヌ、クグイが現れる。
「アンタ、先走って出るなって言ったでしょうが!」
「空間移動……なんって美しい体験なんだ!」
「はあああ?」
更に、キルキル、ミキル、インフ、マァマ、最後に、ハウンドが現れる。
「全てきる」
「みんなを守る」
「はあ~、
「ふう~、年かしら、ああ、カインちゃん抱きしめて元気出したいわ」
「さあ、稼がせてもらいましょうか」
「はあああああああ!?」
カインは穴から出てくる仲間たちを背中に感じながら、ニッと笑う。
「さあ、正真正銘、最後、の、戦いを始めよう、か」