「ステータス、オール1……う、嘘だろ」
震える手の中にある計測球が示す数字は何度見てもすべて、1だった。
「前に、ウソーが模写されたときに、ココル、が、鑑定してくれたウソ―、の、ステータス、も、全部、1になってた」
『カインさん。エーテ、思考や動きはあの人を模写しているかもしれませんが、ステータスはグレンさん並みです。そして、あの身体なので硬さはグレンさん以上です。……で、もう一つ。気になることが、模写されたあの人のステータス全て……1になってるんです。エーテの巻き添えで死ぬかもしれません。そうするとエーテが制御不能になる可能性もあるかもしれません……』
「ウソーは叫ぶたびに息を乱すほど体力、が、落ちていた。お前、も、今そうなんじゃないか?」
『はははあ! 心配するな、お前らのような低ステータス者の模写なんてするか!? ふう~……あ~、楽だ。俺は高みの見物で、お前らの足掻くさまを楽しめるなんて。エーテ、お前は俺を守れ。カインはミーテ、キーテ、イーテ、お前らでやれ!』
『ふーっ! ふーっ! 怖いか、カイン? 遺物の、人形と、戦うのは……!』
『はあっはあっは……あはあ……カイン! 痛いか? 苦しいか? それが、俺の、味わった苦しみだ。お前の、存分に、味わえ!』
「お前の能力、を、模写する時、も、お前に浮かんだ術式が、全て、エーテキング、に、流れていったんだろう? 本当に模写、するのなら、お前、と、エーテキング、は、同じ術式が浮かぶ、はず。お前は、ただ、奪われたんだ。そして、呪い、を、かけられた」
「呪い?」
「弱体化、の、呪いだよ。古代文明でも、危険な、術式〔混毒〕」
それはマコットがエーテの記憶部分から見つけた術式だった。
「この、エーテキング、は、誰かを嵌める為の、罠、だったんだ。自分、の、分身を、作れるという、甘い蜜、を、見せつけて、誰かを弱らせて、殺す、つもりだった。強さ、永遠の命、もう一人の自分、そんなもの、を、欲しがる欲深い人間、を」
カインは真っ直ぐバリィを見つめ続けて言葉をつづけた。
ゆっくりと確実に伝わるように階段を一段一段上がるように。
バリィにとって、その階段は絞首台へと昇る階段と言えただろう。
震えはどんどんと大きくなり止まらない。
「う、嘘だ……」
「もう、戻れない、よ。バリィ。お前は、今、世界、で、一番、誰、よりも、」
「嘘だぁあああああああああああ!」
「弱い」
死刑宣告にも近い言葉にバリィは崩れ落ちる。
けれど、ハッと気づく。
まだ、彼には仲間がいた。
頼れる仲間が。
「た、助けてくれ……おまえ、ら……!」
「バリィ、あなたにはがっかりだわ。此処でお別れね」
振り返ったバリィの視界に入ったのは冷たい目をした、バリィの『元』仲間たちだった。