アザンギがワゼルの後ろ手をひねり上げたまま、地上に出ると、もう夜明けも過ぎていて、人々が生活を送っていた。
ワゼルの首にナイフを突き立てるアザンギの姿を見て、女性がひとり悲鳴を上げた。野次馬たちが寄ってくる。
なぜか人質のほうのワゼルが言った。「このとおり、俺は拷問を失敗しちまった。俺が被拷問者に人質にされて、ざまぁない」
アザンギのほうは一言も喋らない。
ワゼルは言う。「人質として言わせてもらうが、馬車を用意しろ。じゃないと、俺は殺されちまう。俺なんか殺されてもいいっていうんなら、放っておいて構わないがね」
徐々に官兵たちも集まってきており、大ごとになっていた。
ワゼルは拷問官として多くの人々に一目置かれていた。そのワゼルが人質にとられたとならば、官兵たちも条件を飲まなければならない。
馬車が用意された。
【つづく】