・・・という、ワゼルが将来拷問官になって、アザンギを拷問するけれども途中でやめ、二人で逃避行を図るという、夢物語をワゼルはアザンギに聞かせたのだった。
二人はまだ、少年である。
アザンギが言った。「俺は、誰かに俺を乗っ取られているということか?」
ワゼルは、「さあ?俺も適当に思いついたまま語っただけだからな」と言った。
アザンギは、「お前が拷問官か。どうだろうな。でも、世界に報復するには拷問官では足りないと思うが」と言った。
ワゼルは星空を見上げた。真っ黒な地面に白い砂をこぼしたみたいに、満天の星空だった。
ワゼルは、「こういう自然を目の前にすると、人間への報復なんてどうでもよくなってくるな」と言った。
アザンギは、「お前がそれを言うのか。でも、報復なんてしてもしょうがないからな。もっと建設的なことをしたほうがいいぞ」
「建設的なことって?」
「そりゃ、子作りとかさあ」とアザンギは苦笑する。
「相手がいない」とワゼル。「男同士では、子作りできないものなあ。俺は、お前とだったら子作りしてもいいと思ったんだがなあ。なあ、アザンギ?」
ワゼルとアザンギはしばらく見つめ合った。
せっかく流れ星が落ちたのに、二人はそれを見逃した。流れ星なんかどうでもいいくらいに、二人はお互いのことを求め合っていたのだ。
【つづく】