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第3話 いわれなき中傷からの婚約破棄3: 婚約者への失望

 エリナは、リアム王子との対話を試みるために王宮を訪れる決意をした。婚約破棄を言い渡されてからというもの、エリナの心には消えない疑問が渦巻いていた。なぜ、リアムはあの場で自分を信じず、一方的な告発を鵜呑みにしたのか。長い年月を共に過ごしてきたはずの相手が、どうしてそんなに簡単に自分を切り捨てたのか。


「直接話せば、何かが変わるかもしれない。」

そう自分に言い聞かせ、エリナは王宮の門を叩いた。



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王宮の執務室。リアムはエリナが訪れたと聞き、一瞬驚いた表情を浮かべたものの、すぐに冷静さを取り戻した。彼の目は冷たく、エリナは胸が痛むのを感じた。


「エリナ、何の用だ?」

リアムの冷ややかな声が、部屋の静寂を切り裂いた。


「リアム様、どうして私を信じてくださらないのですか?」

エリナは感情を抑えながら、真っ直ぐ彼を見つめて問いかけた。


「信じられない理由は簡単だ。」リアムは書類から目を離さずに言った。「これまでに出てきた証拠や証言があまりにも多く、信憑性が高いからだ。」


「その証拠や証言が、もし全て偽りだったら?」

エリナの言葉にリアムは一瞬だけ動揺したようだったが、すぐに表情を引き締めた。


「偽りかどうかを確認する時間はない。それに、君の行動を目撃したという人物たちはみな信頼できる人々だ。」


エリナはリアムの態度に絶望を感じた。かつて彼が自分を心から信じ、守ると誓った日々が遠い過去のものに思えた。


「リアム様……私はあなたを信じていました。あなたも私を信じてくれると思っていました。」

その言葉に、リアムはしばらく無言でいたが、やがて冷たい口調で言い放った。


「エリナ、君は自分のしてきたことを受け入れるべきだ。これ以上、婚約の件で時間を無駄にするつもりはない。」


リアムの言葉は、エリナの胸を深くえぐった。彼の目には、かつて自分を大切に思ってくれた温かさはもうなかった。


「……わかりました。これ以上、あなたに頼るのはやめます。」

エリナは涙をこらえながら、そう言い残して部屋を出た。



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王宮を後にするエリナの目には、涙が溢れそうになっていた。だが、それを見られまいと顔を伏せ、必死に耐えた。


(彼にとって、私はそれだけの存在だったの……?)

リアムが自分を信じなかった事実は、彼女の心に深い傷を残した。それでも、彼女は前に進むしかなかった。


その帰り道、エリナはふと空を見上げた。広がる青空に、ほんの少しだけ心が軽くなるのを感じた。


「誰も信じてくれなくても、私だけは自分を信じなきゃ。」

そう自分に言い聞かせることで、わずかに勇気を取り戻した。



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その夜、エリナはリリアに手紙を書いた。内容は簡潔で、自分がどうしても真実を証明したいと思っていること、そして協力をお願いしたいということだった。


翌日、リリアから返事が届いた。彼女はエリナを心配しつつも、「私にできることがあれば、何でも協力するわ」と記していた。その言葉にエリナは少しだけ安堵を覚えた。


「ありがとう、リリア。あなたがいてくれるなら……私はきっと大丈夫。」

エリナは手紙を握りしめ、心に新たな決意を抱いた。



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数日後、エリナはリリアと再会し、現在の状況について話をした。リリアは彼女の話を聞きながら、眉をひそめた。


「エリナ、これは普通の中傷とは思えないわ。」

「私もそう思う。誰かが意図的に仕組んでいる気がするの。」


二人は一緒に証拠を集める計画を立て、行動を始めた。まずはエリナの評判を貶めた手紙や証言の出所を調べることにした。


「私たちで真実を暴きましょう。リアム王子が信じてくれなくても、真実を知ればきっと後悔するはずよ。」

リリアの励ましに、エリナは力強く頷いた。


「ええ、絶対に証明してみせるわ。私は罪を犯してなんかいない。」







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