僕はただただ驚くばかりだ。
自分の身体が勝手に動いて、スライムを倒しながら最奥まで進んでしまうなんて。
今まで、僕はスライムを倒せたことは無い。
ショートソードで攻撃しても、フイッと避けられるか、当たってもゴムみたいな弾力に弾かれてしまうから。
スバルが僕の身体を動かしたら、あんなにアッサリ一撃で倒せてビックリしたよ。
オマケに、宝箱に入っていたカード。
魔法文字、今まで意味が分からなかったのに、書いてある内容がスバルだけじゃなく僕にも分かった。
言語理解とか転生者特典とか、僕の身体に付与されたから読めるらしい。
スバルが動かしている僕の指が文字に触れたら、文字が光ってスキルが流れ込んできた。
スライムアタック、イジメっ子から逃げるときに使えるかも?
魔石とスキルカードを手に入れた後、スバルはダンジョンから出た。
僕は見ているしかできないので、もう諦めてスバルがやることを観察するよ。
ダンジョンの外に出ると、担任の先生がトレミーたちを連れて歩いてくるのが見えた。
「アルキオネくん、友達を置いてどこへ行っていたんだい?」
「探したんだぞ、アルキオネ~」
「急にいなくなるから心配したじゃないか」
「ちっとも帰ってこないから探しに行くところだったぞ」
先生が咎めるように言う。
トレミー、スーフィー、ハインドが、大嘘をついている。
どうやら、ダンジョン探索中に僕が勝手にいなくなったことにされたらしい。
事情を話したって、先生は僕の言うことなんか信じない。
トレミーたちの親はお金持ちで、学園に寄付をしている。
担任の先生はトレミーたちの味方だ。
いつもの僕なら、ここで黙って俯くだろう。
でも、スバルは違った。
「すいません、スライムを見つけて、つい夢中で狩りに行ってしまいました」
「「「えっ?!」」」
「狩るのはいいが、パーティメンバーを置き去りにするのはよくないな」
普段の僕とは全く違うことを言い出すから、3人組が目を真ん丸にして驚いてるよ。
先生はヤレヤレという感じで小さく溜息をついて言う。
「はい、次はみんなも誘って狩りに行きます。あ、これが倒したスライムの魔石です」
「ふむ。では魔物討伐をしたということで研修目的クリアとしておこう」
スバルがベルトポーチから魔石を出して渡すと、先生は合格にしてくれた。
よかった、これで仮冒険者レベルが1つ上がる。
「あと、宝箱も見つけたのでアイテムを持ち帰りました」
「「「えぇっ?!」」」
「つまりスライムを狩りながら最奥まで行ったのか。なら仮レベルは2つUPだね」
「はい。これ宝箱に入っていたカードです」
スバルの更なる報告に、3人組が仰天しちゃったよ。
先生は冷静に僕の(というかスバルの)2レベルアップを告げた。
かけだしダンジョンでは仮冒険者レベル4まで上げることができる。
制限時間内に帰っただけの3人はレベル1→2。
スバルが魔物討伐と宝箱開封をしたので、僕のレベルは3人を追い越して1→3になった。