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第5話:スライムアタック

 冒険者学園に入学した最初の月の目標は、かけだしダンジョンをクリアして仮冒険者レベル4になること。

 子供たちの基礎能力値によって違いはあるけれど、1ヶ月以内に3つの条件全てを達成することが多い。

 ①の制限時間内帰還は探索に夢中になり過ぎなければ基本的に達成できる。

 ②の魔物討伐や③の宝箱は、戦闘能力次第だ。


「お前、ズルしたんじゃないか?」

「学園最弱のお前がスライム倒せるわけないだろ」

「宝箱なんて誰かに頼んで取ってきてもらったんじゃないか?」


 ダンジョン研修を終えた後、先生が去った後にトレミー、スーフィー、ハインドが言いがかりをつけてくる。

 見下していた相手にレベルを追い越されたことが、意地悪トリオにとって面白くないらしい。

 呪いの魔法陣を使ったイジメとか、動けない奴をダンジョンに置き去りにしたこととか、黙っててやったんだから感謝してほしいくらいだけどな。


「他の人なんていなかったよ。パーティを組んでる人としか同じダンジョンに入れないだろ?」


 俺は言い返してやった。

 学園が管理するダンジョンには特殊な仕様がある。

 それは、パーティを組んだ相手となら一緒に入ることができるが、組んでなければ入口から別フィールドになる。

 入った空間が違うから、戦闘に協力することはできないし、アイテムの受け渡しもできない。

 パーティ招待ができるのはリーダーのトレミーだけだ。

 先生も意地悪トリオも、俺がダンジョンから出てきたところを見ている。

 誰かからアイテムを貰う暇なんてなかった。


「どうせ1回出て外でアイテム貰って入りなおしたんだろ」

「それで今出てきましたみたいなフリしたんじゃないか?」

「魔法文字も読めない馬鹿のくせに小細工しやがって」


 今までのアルキオネを知ってるから、3人組は疑いの目で睨んでくる。

 まあ、俺が転生してステータスが上がったことを教える気は無いけど。


「そんなに疑うなら、明日一緒にスライムを狩ればいいだろ。じゃ、またな」

「お前! アルキオネのくせに生意気だぞ!」


 面倒くさいから帰ろうとしたら、なんかどっかで聞いたような台詞を言うトレミーに肩を掴まれた。


 はぁ、こんな連中と1ヶ月もパーティ組まなきゃならないなんて。

 冒険者学園ではレベルが近い生徒がパーティを組んでダンジョンを攻略する。

 入学間もない頃はみんな仮レベル1だから、同じクラスの生徒と組むことが多い。

 クラス内のクジ引きで意地悪トリオと同じパーティになったアルキオネは運が悪いな。


「ちょっとこっちに来い」

「断る」


 トレミーが肩を掴んだままグイッと押してくる。

 どこかへ連れて行かれそうだったから、その手を払いのけて拒否した。


「なんだよお前反抗期か?」

「いいから来いよ」


 スーフィーとハインドが退路を断つように囲んでくる。


 あぁ面倒くさい。

 そうだ、あれを使ってみよう。

 俺はスキルカードから習得したスキルを発動した。


 スキル:スライムアタックLv1


 手乗りサイズのスライムがトレミーめがけて飛ぶ。

 俺の運がいいのかトレミーの運が悪いのか、手乗りスライムが鳩尾を強打!

 トレミーは転倒したうえに、追い打ちみたいに頭をぶつけて気絶した。


「え?!」

「な、何だ?!」


 驚く2人にも、続けてスライムアタックLv1をお見舞いしておこう。

 今度はそれぞれの頭に当たり、脳震盪を起こしたスーフィーとハインドも倒れた。


 スライムアタック、早速役立ったな。

 明日が面倒だけど、置き去りにされた仕返しにこいつら置いて帰ろう。

 ダンジョンの外なら、パーティメンバーを置き去りにしても先生には叱られない筈。

 俺は3人組が意識を取り戻す前にその場から立ち去った。

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