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第13話:学食のオーク角煮

「落ちこぼれが風魔法と剣術でスライム10匹倒した?」

「なんの冗談だよそれ」


 トレミーとハインドは、俺がスライムを狩れるとは思っていないようだ。

 現場を見ているスーフィーが言っても、冗談だと思われている。


「スライム魔石どうする? みんなで分ける?」

「「「いらねーよ、そんなゴミ」」」


 討伐証明は1コでいいけど、売れるからパーティ内で分配するべきかと聞いてみたんだが。

 3人声を揃えて拒否られた。

 魔石1コで焼き菓子1袋買えるのに。

 要らないなら全部俺が貰っておこうとベルトポーチに入れた。



「今回はみんなと一緒に帰ってきたね。トレミーくんとアルキオネくんはこれでかけだしダンジョンクリアだが、今月中はパーティメンバーのクリアを手伝いなさい」

「「はい」」


 職員室でトレミーと共に先生の指示を受けながら、俺は背中に刺さるような視線を感じていた。

 今回のダンジョン研修で3つの条件を達成したのは、箱開けをしたトレミーと、時間内帰還できた俺。

 スーフィーとハインドは、3週目と4週目でそれぞれ箱開けをすればクリアになる。

 またも俺に先を越されて、2人は面白くないようだ。


 スーフィーがスライムたちを俺にけしかけたのは、ボコらせて気絶した俺を放置して帰るつもりだったんだろう。

 それでまた時間切れを狙い、先生には「またいなくなった」とか言って評価を下げる計画と思われる。

 前回、ダンジョン外でスライムアタックを食らって気絶させられたことへの仕返しも兼ねていたかもしれない。


 残念ながら、今のアルキオネの防御力はスライム10匹ぶつかっても大丈夫!

 ウィンドストームで吹き飛ばさなくてもダメージを受けることは無い。



 職員室を出て、俺は学食に直行した。

 今日のメニューは、日本人には嬉しい米飯に合うオカズだ。

 東方の国ジャポンの料理らしい。

 使えるなら使ってみろとばかりに箸まで置いてあるぞ。


「おばちゃん、オーク角煮大盛で!」

「あいよっ」


 食堂のおばちゃん、この1週間ずっと大盛リクエストしているから慣れちゃったのか不思議がらなくなった。

 大盛の角煮&白飯、野菜の御浸し、漬物、日本茶っぽいものを入れた湯呑と箸をトレーに乗せて、いつもの窓際の席に向かう。


(おお! 日本の角煮と同じ味!)


 箸で切れるぐらい柔らかく煮えたオーク肉は、豚バラ肉そっくりの食感と味わい。

 一緒に煮込まれた大根ぽい物もタレの味が染みていて美味い。

 すき焼きのタレみたいな甘辛い味付けが白飯を進ませる。


「ごちそうさま! 今日もすっごく美味しかった!」

「はいはい。ちゃんと箸で食べられるなんて凄いねぇ」


 タレも白飯にかけて完食したから、角煮の器は空っぽだ。

 おばちゃんは俺が箸を使って食べられたことを褒めてくれた。


 この国の人間では珍しいだろうけど、俺は前世で毎日使ってたからな。

 フォークとナイフの扱いはアルキオネの身体に染みついているが、俺としては箸の方が手に馴染む。


 図書館で読んだ本によれば、ジャポンは日本っぽい雰囲気の国らしい。

 冒険者になったら是非行ってみたいな。


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