目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第21話:意地悪トリオからの解放

 冒険者学園に入学して1ヶ月が経った。

 最初の1ヶ月はクラス内抽選によって決まるパーティに所属が必須だったけれど、その期間を過ぎれば自由に組むことができる。


「アルキオネ! お前をパーティから追放する!」


 教室内で、トレミーがふんぞり返って言い放つ。

 トレミーの両脇には、ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべるスーフィーとハインドがいる。

 クラスの生徒たちは、遠巻きにしながらその様子を眺めていた。


 ……追放も何も、今日で解散だが?


 俺は自分の席に座ったまま、黙ってトレミーを見つめる。

 今は放課後で、先生はいない。

 いたとしてもトレミーの親に金を積まれているから、我関せずという対応をするだろう。


「お前は学校の備品を雑に扱って壊してしまったり、パーティを置き去りにしたり、行動に問題があり過ぎるからな。もう一緒にダンジョンへ行ってやることはできない」


 上から目線で偉そうにトレミーが言う。

 そうだそうだと相槌を打つのがスーフィーとハインド。

 その言葉、そっくりそのまま返してやりたい。

 ダンジョン研修初日に撮影用魔道具を壊したのはハインドだ。

 呪いの魔法陣にアルキオネを無理やり乗せた後、置き去りにしたのは意地悪トリオの方だ。


 腹立たしくはあるが、これで面倒くさいトリオと一緒にダンジョンへ潜らずに済む。

 俺は引き続き黙っておくことにした。


「そうそう、クラスのみんなもお前とは組みたくないそうだぜ」

「これでお前はソロ決定だな」

「ソロじゃダンジョン使用許可が下りないな。留年確定おめでとうアルキオネ」


 同じような腹黒スマイルを浮かべながら、意地悪トリオが口々に言う。

 どうやら、クラスのみんなに金か物を与えて根回ししたようだ。

 クラスの面々は俺が見回すと一様に目を逸らしている。


 さて、困ったぞ。

 意地悪トリオからの解放は万々歳だが、誰ともパーティを組めないのではダンジョンに入れない。

 プロの冒険者になればソロで潜ることが可能だが、学生のうちは2人以上でないとダンジョン使用を許可してもらえないんだ。


「来年の1年生たちがお前と組んでくれるといいな」

「まあ無理だと思うけど」

「誰も落第生とは組みたがらないかもしれないぞ」


 まるで俺の留年が確定したように、トレミーたちがニヤつきながら言う。

 それはつまり、来年の1年生たちにも根回しするってことだろう。


 普通そこまでやるか?

 こいつら、どんだけ金の無駄遣いする気?

 そこまでアルキオネをいびり倒して何の得があるというのか?


「意地汚いお前は学食でメシが食えれば満足かもしれないが、留年は3回までだからな」

「4回目は退学だぜ」

「冒険者ギルドは退学した奴を登録させないから、お前もう冒険者になれないな」


 勝手に俺の未来を予想して意地悪トリオが言う。

 言いたいことはそれだけか?

 俺は腹立たしく思いつつも表情には出さず、黙って席を立つ。

 ここにいても時間の無駄にしかならない。

 教室を出て歩き出すと、トレミーたちが下品に大爆笑する声が廊下の端まで響いていた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?