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第22話:意外な助っ人

 僕だったら泣いていたかもしれない。

 誰ともパーティを組めず、ダンジョンに行けず、進級も卒業も望みが断たれるなんて。

 冒険者になれないのでは、身分証明も市民権も得られない。

 親がいる子なら生まれた時から市民権を持つけれど、僕には親がいないから。


(さーて、どうするかな)


 スバルは、僕ほどは落ち込んでいないみたいだ。

 彼は今日のかけだしダンジョンで手に入れたスライム魔石を売りに、モントル時計店へ向かった。


「今日も状態の良い魔石だね。かけだしダンジョンは今日で終了かな?」


 様々な大きさや形の時計が並ぶ店の中、店主のリピエノさんが微笑みながら問いかける。

 スライム魔石は今日も1個につき銅貨3枚で買い取ってくれた。


「はい。でもパーティ解散になった後、組んでくれる人がいないんです。だからしばらく納品できないかもしれません」

「なるほど。息子から少し話は聞いているが、問題は意地悪3人組かい?」


 購買のケラエノさん、トレミーたちのことを知ってたんだ。

 リピエノさんはフムと少し考えてから、意外な提案をしてくれた。


「なら、2年生とパーティを組めばいい」

「えっ?!」


 リピエノさんの言葉に、スバルが驚いている。

 学年の違う人とパーティを組むなんて、1年生側から頼める話じゃない。

 でも上級生から声がかかることは、たまにあると聞いたことがあった。


「私にアテがあるから、声がかかるまで待つといいよ」

「はい! ありがとうございます!」


 リピエノさんに後光が差して見えるよ。

 ツヤツヤした頭部に店内の照明が当たっているからかもしれないけど。



 翌朝。

 クラス内でみんながパーティ編成をする中、スバルはポツンと取り残されている。

 それを横目で見てニヤニヤ笑うのはトレミーたち。

 彼等は今月もトリオを組むらしい。


「アルキオネくんは、いるかい?」


 そこへ、扉を開けて入って来る人たち。

 クラスのみんなが教室の入口を振り返る。

 意地悪トリオも怪訝な顔をしてそちらを見た。


「ここにいます!」


 来るのを予想していたスバルだけが、元気よく立ち上がって答える。

 入ってきたのは3人、剣と盾を背負った体格の良い男子生徒、弓矢を背負った細身の女子生徒、杖を持つ小柄な男子生徒。

 リピエノさんが言っていた2年生パーティだと思う。


「いたいた」

「俺たちと一緒にダンジョンへ行こう」

「今日これからいいかな?」

「はい!」


 爽やかな笑顔の2年生たちに誘われて、スバルは即答でついていった。

 クラスのみんなは困惑するばかり。

 教室に残るトレミー、スーフィー、ハインドが、ギリッと歯噛みしてこちらを睨んでいる。

 そんなものには構わず、スバルは嬉しそうに上級生の後をついて教室を出た。

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