ミュスクルさんが全部釣ってきてくれたおかげで、その後は最奥にある宝箱まで魔物との遭遇無く素通りで進めた。
初級ダンジョンの魔物は出現数が決まっていて、倒したパーティメンバー全員が一度外へ出ないと出現しない仕様だ。
フェヴリエ洞窟の宝箱の色は黄色、これって出現するスライムの色に合わせているのかな?
「この箱のスキルは結構使えるぞ。開けてみな」
「はい」
ミュスクルさんに言われて、スバルは箱を開けた。
宝箱が開く瞬間ってワクワクするね。
先輩たちはどんなスキルか知ってるんだけど、見てのお楽しみと言って内容は伏せてくれている。
開いた箱から出てきたのは、防御系のスキルカードだった。
スキル:スライムガード
スライムの弾力を強化し再現したスキル。
スキルを使うと弾力のある壁が現れて、攻撃を防ぐ。
使用者の運が良ければ、ダメージ返しの効果が出る。
「これはいいスキルですね!」
「だろ?」
スバルは早速カードの魔法文字を右手の人差し指でなぞった。
文字が微かに光った後、スキルが脳内に書き込まれる。
これでスキル習得だ。
「さ~て帰るか」
「これでアルはフェヴリエ洞窟クリアね」
「撮影魔道具(ヴィデオ)を返却して帰ろう~」
フェヴリエ洞窟研修は、1回で3つの条件全て達成となった。
スバルがスライムと戦っているところや宝箱を開ける様子は撮影してあり、職員室へ提出して完了だ。
「先輩たちがついてるなら、来週からマルス洞窟を攻略してもいいぞ」
担任のアンティ先生が、次のダンジョンの使用許可を出してくれた。
短縮ランク上げは、既にそのダンジョンをクリア済の上級生が、下級生を育てるのによくやる攻略方法らしい。
ダンジョンは1年生のうちは週1回だけど、2年生からはフリーだから、自分たちのダンジョン研修の合間にお手伝いできるんだよとミニョンさんが教えてくれた。
その後、学食へ行ったら睨んでくるのはトレミー、スーフィー、ハインド。
追放した相手が楽しそうにしているのを見た彼等は、きっと面白くなかったんだろう。
でも先輩たちが一緒に来ているから堂々とはイジメに来れないらしく、偶然を装った嫌がらせを仕掛けてきた。
(わざとらしい嫌がらせだな)
心の中で呟くスバルは、その行動が想定内だったらしい。
ハインドがよろけたフリをして放り投げた熱いお茶入りカップが飛んでくるのを、スバルは覚えたてのスキルを使って防いだ。
スキル:スライムガードLv1
カップもお茶も見えない防壁に阻まれて、こちらには当たったり服を濡らしたりしない。
オマケにポヨンと跳ね返されたカップとお茶が、投げたハインドを直撃!
「熱~っ!」
「えっ?!」
「何?!」
ハインドは顔に熱いお茶がかかり、鼻にカップがあたり、熱くて痛くて大変そう。
トレミーとスーフィーが驚き慌てたけど、スバルのスキルには気付いてなかった。