モントル時計店。
放課後、俺は黄色スライムの魔石を売りに行った。
黄色スライムは水色スライムよりも魔石に入ってる魔力が多いそうで、1個あたり銅貨6枚になるらしい。
魔石は合計20個だから、銅貨120枚。
銅貨は10枚で銀貨1枚と同価格なので、銀貨12枚で支払ってくれた。
今日はお菓子だけじゃなく、露店の串焼きも買おうかな?
「スライムガードってスキル便利ですね。試しに使ってみたら、イジメっ子が投げたカップを跳ね返して本人の顔面にヒットしてましたよ」
「あははは! そりゃイジメっ子の自業自得だね!」
俺は世間話でもするノリで、学食でのことを話した。
リピエノさんはフムフムと聞いた後、ハインドをスキルで返り討ちにした話を聞いた途端に大笑いした。
意地悪トリオのことは学園の先生たちには言えないけど、リピエノさんには安心して話せる。
味方してくれる人がいるのは本当に心強い。
「それにしても、どうしてそんなにアルをイジメるのかしら?」
首を傾げるシェリーさん。
モントル時計店は店舗の裏が店主一家の自宅なので、娘のシェリーさんは俺と一緒に店に来ている。
「理由は知らないけど、入学した最初の日から嫌がらせしてきたんだよ」
俺はアルキオネの記憶を引っ張り出して話した。
入学時のステータスチェックの結果用紙を見られて、馬鹿にされたのが始まりだけど。
まるでその前からターゲットにされてたような気がする。
「イジメっ子たちのリーダーは、トレミーという子だったかな?」
「うん」
「お父さん、トレミーって確か奴隷商のユピテルさんの息子じゃなかった?」
「ああそうだ、あそこの末っ子だったな」
話題がトレミーの話になり、俺はそこで初めてトレミーの父親が誰か知った。
奴隷商のユピテルさんといえば、アルキオネに金貨50枚の価値をつけていたな。
「そういえば僕、ユピテルさんに『金貨50枚で買い取ってあげる』って言われたことがあります」
「「それだ!」」
ユピテル評価額の話をしたら、リピエノさんとシェリーがハッと気付いた様子でハモる。
父娘揃って勢いよく言うからちょっと驚いた後、俺は話を続けた。
「あと、先月に孤児院の前で会ったときは、『勉強が嫌になったらいつでもオジサンのところへおいで』って言われました」
「なるほど、読めてきたぞ」
「学生を奴隷にはできないから、退学するように仕向けていたのね」
シェリーさんに言われて、俺は意地悪トリオの意図が分かった。
パーティ追放や、他の生徒にパーティに入れないように仕組んだのも、そういうことか。
「アル! そんな悪い奴等に負けちゃダメよ! 私たちがついてるからね!」
って正義感に燃えるシェリーさん、抱き締めてくれるのは嬉しいけど。
7~8歳とは思えない胸に押し付けちゃダメだ~!
リピエノさん、ニコニコしてないで娘を止めた方がいいんじゃない?
……といってもアルキオネの身体はお子様、顔が赤くなる以外は何も起きなかったのが幸いだ。