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第31話:魔導具ゴーレム

「アルキオネくんは初級ダンジョンを全てクリアしたので、みんなより少し早いけど2年生になります」


 1年生の1学期最後の日。

 アンティ先生が教壇に立ち、隣に俺を立たせてそう説明した。

 クラスのみんなは「おーっ」とか「いいなぁ」とか言っている。

 意地悪トリオだけが全然雰囲気が違う。

 3人揃って眉間に皺を寄せて、恨めしそうにこちらを見ていた。


 そんなに睨むなよ。

 そもそもお前らがアルキオネをハブるから、2年生と組むことになったんだぞ?

 って言ってやりたいが、面倒くさいので黙っておこう。

 まあどうせ放課後になんか言ってくるだろうから、そのときに言い返してやるよ。


 そう思っていたら、案の定放課後に3人が校庭で待ち構えていた。

 多分これが最後だとでも思っているんだろう、いつもより気合が入っているようだ。


「お前が飛び級だと?」

「ふ、ふざけんなよ」

「退学の間違いだろ」


 3人揃って額に青筋が。

 俺は無の表情でそれを聞いていた。


 スーフィーの声がちょっと上擦ってるのは、相変わらず魔法を警戒しているのかも。

 前衛向きのステータスをもって生まれてきたスーフィーは、魔法文字を覚えるには知力が足りない。

 スーフィーのステータスは筋力や敏捷などが高い代わりに、知力と魔力が劣る。

 故に彼は魔法に苦手意識があるらしい。


「で? 何? ラストバトルでもしたいの?」

「余裕こいてんじゃねぇよ!」


 俺が余裕を見せて言ってやったら、沸点が低いハインドがブチッと切れた。

 ほぼ同時にトレミーがポケットに手を突っ込むのが見える。

 何か仕掛ける気か。


「お前の相手はこいつだ!」


 怒鳴るトレミーはポケットからピンポン玉くらいの茶色い玉を取り出す。

 それを地面に叩きつけるように投げると、岩の巨人が現れた。

 ファンタジーでお馴染みのゴーレムだ。

 ゴーレムは俺めがけて拳を振り下ろした。


「なるほど、そうきたか」

「父さんの魔道具を借りてきたのさ! こいつに下位魔法なんか効かないぞ!」


 ゴーレムの拳をヒョイッと避けながら俺が呟くと、トレミーが勝ち誇ったように言う。

 なるほど、こいつは魔法耐性が高いのか。

 ついでに防御力も高そうだな。


「ゴーレム! そいつを捕まえろ! 奴隷として売り飛ばしてやる!」


 威圧的な表情でトレミーがゴーレムに命じる。

 ゴーレムはその声に反応して、何か技を出すように構えた。

 直後、俺を囲むように地面から岩がはえてくる。

 俺を捕獲する檻のつもりか?

 跳躍してその中心から外へ出ると、着地した先にまた石筍みたいなのがはえてきた。

 俺がそれも飛び越えると、着地したところにまた岩の檻がはえてくる。


「逃げても無駄だぞ! 俺に土下座して奴隷になりますと言えば止めてやるけどな!」


 勝ち誇ったようにゲラゲラ笑いながらトレミーがいう。

 いやそれ、結局奴隷にされるじゃないか。

 心の中でツッコミを入れつつ、俺はゴーレム対策を考えた。

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