「アルキオネくんは初級ダンジョンを全てクリアしたので、みんなより少し早いけど2年生になります」
1年生の1学期最後の日。
アンティ先生が教壇に立ち、隣に俺を立たせてそう説明した。
クラスのみんなは「おーっ」とか「いいなぁ」とか言っている。
意地悪トリオだけが全然雰囲気が違う。
3人揃って眉間に皺を寄せて、恨めしそうにこちらを見ていた。
そんなに睨むなよ。
そもそもお前らがアルキオネをハブるから、2年生と組むことになったんだぞ?
って言ってやりたいが、面倒くさいので黙っておこう。
まあどうせ放課後になんか言ってくるだろうから、そのときに言い返してやるよ。
そう思っていたら、案の定放課後に3人が校庭で待ち構えていた。
多分これが最後だとでも思っているんだろう、いつもより気合が入っているようだ。
「お前が飛び級だと?」
「ふ、ふざけんなよ」
「退学の間違いだろ」
3人揃って額に青筋が。
俺は無の表情でそれを聞いていた。
スーフィーの声がちょっと上擦ってるのは、相変わらず魔法を警戒しているのかも。
前衛向きのステータスをもって生まれてきたスーフィーは、魔法文字を覚えるには知力が足りない。
スーフィーのステータスは筋力や敏捷などが高い代わりに、知力と魔力が劣る。
故に彼は魔法に苦手意識があるらしい。
「で? 何? ラストバトルでもしたいの?」
「余裕こいてんじゃねぇよ!」
俺が余裕を見せて言ってやったら、沸点が低いハインドがブチッと切れた。
ほぼ同時にトレミーがポケットに手を突っ込むのが見える。
何か仕掛ける気か。
「お前の相手はこいつだ!」
怒鳴るトレミーはポケットからピンポン玉くらいの茶色い玉を取り出す。
それを地面に叩きつけるように投げると、岩の巨人が現れた。
ファンタジーでお馴染みのゴーレムだ。
ゴーレムは俺めがけて拳を振り下ろした。
「なるほど、そうきたか」
「父さんの魔道具を借りてきたのさ! こいつに下位魔法なんか効かないぞ!」
ゴーレムの拳をヒョイッと避けながら俺が呟くと、トレミーが勝ち誇ったように言う。
なるほど、こいつは魔法耐性が高いのか。
ついでに防御力も高そうだな。
「ゴーレム! そいつを捕まえろ! 奴隷として売り飛ばしてやる!」
威圧的な表情でトレミーがゴーレムに命じる。
ゴーレムはその声に反応して、何か技を出すように構えた。
直後、俺を囲むように地面から岩がはえてくる。
俺を捕獲する檻のつもりか?
跳躍してその中心から外へ出ると、着地した先にまた石筍みたいなのがはえてきた。
俺がそれも飛び越えると、着地したところにまた岩の檻がはえてくる。
「逃げても無駄だぞ! 俺に土下座して奴隷になりますと言えば止めてやるけどな!」
勝ち誇ったようにゲラゲラ笑いながらトレミーがいう。
いやそれ、結局奴隷にされるじゃないか。
心の中でツッコミを入れつつ、俺はゴーレム対策を考えた。