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第33話:アンティ先生

 意地悪トリオは親が冒険者学園に多額の寄付をしているので、治外法権ぽい扱いを受けている。

 しかし、校庭でゴーレムを暴れさせるのはやり過ぎだったようだ。

 騒ぎを聞きつけて、アンティ先生が走ってきた。


「こら~っ! 校庭でゴーレム出すのはやめ……あれ?」


 先生、来るのちょっと遅かったな。

 既にゴーレムは俺が鎮圧済だ。


「先生、ゴーレムならもう消えましたよ」

「えっ? 君が倒したのかい?」

「はい。召喚主(トレミー)を」

「なるほど。よく思いついたな」

「はいこれ没収品です」

「これは……行商人が盗賊対策に持ち歩く召喚玉じゃないか」


 俺はさっき拾った茶色い玉を、アンティ先生にに手渡した。

 先生はまだ白目を剥いて気絶したままのトレミーをチラッと見て、ヤレヤレというように溜息をつく。


「スーフィーくん、君はトレミーくんを保健室へ運んでくれ。ハインドくんも付き添って」

「「はい」」


 アンティ先生に言われて、観念したようにスーフィーとハインドが頷く。

 筋力自慢のスーフィーは完全脱力状態のトレミーを軽々と肩に担ぎ上げ、校舎に向かって歩き出した。

 その後にハインドが続く。

 保健室へ向かう3人をしばし見送った後、アンティ先生は申し訳なさそうな顔でこちらを見た。


「まさかここまでエスカレートするとは……。放置してすまないアルキオネくん」

「いえ、大人の事情は分かってますから」


 アンティ先生はイジメを放置したことを詫びた。

 まあ、上から命じられたんだろうし、俺は先生を恨む気は無い。


「君は入学間もない頃と比べて随分変わったねぇ」

「スーフィーに呪いの魔法陣の上に投げ飛ばされてから、変わったんですよ」

「そんなことまでされたのか……」


 俺は初めて、じっくりアンティ先生と話すことができた。

 2年生になる2学期からは話す機会は無さそうだから、この際イメジの全てをバラしておこう。


「イジメ倒して、学園を中退させる計画だったようです」

「何のためにそんな計画を?」

「中退させて冒険者になる夢を潰し、奴隷にしようと企んでいたんです。トレミーの親の職業は御存知ですよね?」

「あぁ知ってる。君が中退しなくて良かったよ」


 アンテイ先生がそう言うのは、おそらく俺の能力値の変化を知ったからだろう。

 元のアルキオネの能力値なら、そうは言わなかったかもしれない。


「中退なんかしませんよ。僕は冒険者になります!」

「うん、君の活躍を楽しみにしているよ」


 俺は宣言するように言い切る。

 まるで卒業生を送り出すように応えて、アンティ先生が微笑んだ。



 その後、ゴーレム騒ぎを起こした意地悪トリオは学園長直々に説教された。

 噂によると、あの召喚玉はトレミーが親に無断で持ち出した物だとか。

 それでトレミーは学校だけでなく、家でもガッツリ説教されたらしい。

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