意地悪トリオは親が冒険者学園に多額の寄付をしているので、治外法権ぽい扱いを受けている。
しかし、校庭でゴーレムを暴れさせるのはやり過ぎだったようだ。
騒ぎを聞きつけて、アンティ先生が走ってきた。
「こら~っ! 校庭でゴーレム出すのはやめ……あれ?」
先生、来るのちょっと遅かったな。
既にゴーレムは俺が鎮圧済だ。
「先生、ゴーレムならもう消えましたよ」
「えっ? 君が倒したのかい?」
「はい。召喚主(トレミー)を」
「なるほど。よく思いついたな」
「はいこれ没収品です」
「これは……行商人が盗賊対策に持ち歩く召喚玉じゃないか」
俺はさっき拾った茶色い玉を、アンティ先生にに手渡した。
先生はまだ白目を剥いて気絶したままのトレミーをチラッと見て、ヤレヤレというように溜息をつく。
「スーフィーくん、君はトレミーくんを保健室へ運んでくれ。ハインドくんも付き添って」
「「はい」」
アンティ先生に言われて、観念したようにスーフィーとハインドが頷く。
筋力自慢のスーフィーは完全脱力状態のトレミーを軽々と肩に担ぎ上げ、校舎に向かって歩き出した。
その後にハインドが続く。
保健室へ向かう3人をしばし見送った後、アンティ先生は申し訳なさそうな顔でこちらを見た。
「まさかここまでエスカレートするとは……。放置してすまないアルキオネくん」
「いえ、大人の事情は分かってますから」
アンティ先生はイジメを放置したことを詫びた。
まあ、上から命じられたんだろうし、俺は先生を恨む気は無い。
「君は入学間もない頃と比べて随分変わったねぇ」
「スーフィーに呪いの魔法陣の上に投げ飛ばされてから、変わったんですよ」
「そんなことまでされたのか……」
俺は初めて、じっくりアンティ先生と話すことができた。
2年生になる2学期からは話す機会は無さそうだから、この際イメジの全てをバラしておこう。
「イジメ倒して、学園を中退させる計画だったようです」
「何のためにそんな計画を?」
「中退させて冒険者になる夢を潰し、奴隷にしようと企んでいたんです。トレミーの親の職業は御存知ですよね?」
「あぁ知ってる。君が中退しなくて良かったよ」
アンテイ先生がそう言うのは、おそらく俺の能力値の変化を知ったからだろう。
元のアルキオネの能力値なら、そうは言わなかったかもしれない。
「中退なんかしませんよ。僕は冒険者になります!」
「うん、君の活躍を楽しみにしているよ」
俺は宣言するように言い切る。
まるで卒業生を送り出すように応えて、アンティ先生が微笑んだ。
その後、ゴーレム騒ぎを起こした意地悪トリオは学園長直々に説教された。
噂によると、あの召喚玉はトレミーが親に無断で持ち出した物だとか。
それでトレミーは学校だけでなく、家でもガッツリ説教されたらしい。