セラフィナのおかげで魔法のレパートリーが増えた。
古代魔法【
現代魔法や薬草では異常の種類によって使うものを変えなきゃならない。
古代魔法は1つの魔法で全ての状態異常を解除できる。
こんなに優秀な魔法が広まっていない理由は、光属性をもつ者しか使えないから。
光属性は聖女の証と言われるくらい、一般人には縁のない属性だ。
セラフィナは本物の聖女だけど、命を狙われているから力を使わないように隠していた。
その代わり、俺に様々な光魔法を教えてくれる。
孤児院のみんなが船酔いから解放されて元気になった頃。
まるで地球のモルディブみたいな美しい島々と珊瑚礁が見えてくる。
リピエノさん所有の大型帆船は、環のように小さな島が並ぶ環礁っぽい中に入って停泊した。
「実は、ここでみんなに頼みたいことがあるんだ」
「なになに~?」
「お手伝い~?」
リピエノさんが、甲板に子供たちを集合させて言う。
アトラスたちは興味津々だ。
ケラエノさん、ミュスクルさん、シェリーさん、ミニョンさん、ミィファさんが、木でできたバケツと子供が扱いやすそうな小型の熊手を運んできて、子供たちの前に置いた。
「これからみんなを無人島へ連れて行くから、砂浜で貝を採ってくれるかな?」
「貝が採れるの?」
「面白そう~!」
リピエノさんからの依頼は、環礁を形成する無人島での潮干狩り。
砂を掘って貝を採る、子供でも簡単に楽しくできるお仕事だった。
「ここの貝から魔石がとれるんだ。魔石は買い取るから、みんなのおこづかいになるよ」
「やったぁ!」
「いっぱい採ろう~!」
おこづかいと聞いて、アトラスたちのテンションが更に上がった。
盛り上がっているところへ、バランさんたち冒険者パーティが釣り竿とバケツを持って歩いてくる。
「アルとセラは船酔いしないみたいだから、俺たちと一緒に魚釣りに行こう」
「「はい」」
「ではついて来て」
俺とセラフィナは船釣りに連れてってもらえるらしい。
魚釣りなんて異世界転生してから初めてだな。
日本にいた頃は何度か釣りはしたけど、異世界の魚はまだよく知らない。
「波の少ない内海だから、これに乗って行くよ」
「え……?」
釣り船は、ボートを想像していたら、まさかの「筏」だ。
バランさんたちは馴れた手つきで櫂を扱い、筏は滑るように海面を進む。
「ここらでいいかな」
環礁の中でも海の色が少し濃い辺りで筏を停めて、バランさんはアンカーみたいな物を海に投げ込んだ。
パーティメンバーが釣り竿を収納箱から取り出して、それぞれ準備を始める。
バランさんは、俺とセラフィナに釣り竿を手渡して、頭に麦わら帽子みたいな物を被せてくれた。
明るい青色の浅い海の上、日差しはそれほど厳しくはないけど、帽子は被ってといた方が良さそうだ。
「似合う?」
って、セラフィナが聞いてくる。
彼女はシェリーさんのおさがりのサマードレスを着ていて、麦わら帽子もよく似合っていた。
「うん似合う。なんかリゾート地に遊びに来たお嬢様って感じがする」
俺は素直な感想を述べた。
まあ彼女は本当はお嬢様どころかお姫様なんだけど。
セラフィナが神聖王国メシエのお姫様っていうのは、2人だけの秘密だ。