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第42話:花の都フルレ

 常夏の国エテルネル。

 その首都フルレは、一年中色鮮やかな花々が咲くので「花の都」と呼ばれているそうだよ。

 海神ラメル様の加護のおかげで、みんなを乗せた船は高速で順調に目的地に到着した。


 港に近付いたときから、甘い花の香りが漂ってくる。

 香りを放つのは、マリカと呼ばれるつる植物に咲く小さな花だった。


(この白い花、ジャスミンっぽい植物だな。あっちのデカイ花はハイビスカスっぽい)


 船から降りたスバルは、港の建物脇に咲く花々を眺めてそんなことを思う。

 スバルの前世の記憶によれば、5枚の花弁をもつ白い花はジャスミンに似ていた。

 赤やピンクや黄色、様々な色彩をもつ大輪の花々は、ハイビスカスそっくり。


「マリカの花は香りの良いお茶になるのよ」


 隣で一緒に花を眺めながら、セラフィナがコッソリ教えてくれた。

 お茶に詳しいのは、お姫様として暮らしていた頃の知識らしい。


「買い物、楽しみだね!」

「めずらしいお菓子を買おう!」

「今夜はお菓子パーティだね!」

「アルとセラの分も買ってあげる!」

「「ありがとう!」」


 アトラスたちは貝から採れた魔石を買い取ってもらえたので、買い物の話で盛り上がっている。

 孤児院では食べ物は仲良く分けるように教えられているから、潮干狩りに参加しなかったスバルとセラフィナの分も買ってくれるらしい。

 スバルはスライム魔石を売ったお金を持ってるんだけど、アトラスたちが張り切ってるのでお任せした。



「予定よりもかなり早く着いたから、フルレをゆっくり観光できるね」


 と言うリピエノさんは、フルレに住む貴族から注文を受けた時計を納品しに屋敷へ行くらしい。

 フルレには3日滞在予定だったけど、船が驚くほど早く着いたので10日の滞在に変更された。

 滞在中もリピエノさんの船に泊まれるから、宿の心配はしなくていい。


「迷子になるから、バラバラにどこか行ったりしないでね」

「チビたちは肩車しておこう。風景もよく見えるし迷子にならないぞ」

「「「はぁい!」」」


 返事はいいけど何かに夢中になったら駆け出しそうなリック、ミラ、クロエは、バランさんとパーティメンバーに肩車された。

 アトラスとエレクは落ち着いているので、ミィファさんと3人で手を繋いでいる。


「アルとセラは2人で手を繋いで……って既に繋いでるわね」

「私たちは3人で手を繋ごうか」

「じゃあミニョン真ん中だな」

「これどう見ても僕が子供ポジションでしょ」


 ミイファさんに言われるまでもなく、スバルはセラフィナにしっかり手を握られていた。

 シェリーさんの提案で3人手を繋ぐ2年生メンバーの中、ミニョンさんが半目でツッコミを入れている。


「じゃあ行こうか」


 歩き出す先頭は肩車してるので見えやすいバランさんたち。

 その次がミィファさんたち。

 その後ろをスバルとセラフィナ。

 最後尾はミュスクルさん、シェリーさん、ミニョンさん。

 ゾロゾロ続く一行の、フルレ観光が始まった。

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