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第43話:異国の名物

「見て! あれ美味しそう!」

「あのお菓子、買おうよ!」


 まるでツアー客みたいにゾロゾロ連なって歩く孤児院メンバー(3人は肩車)&バランさんパーティ&2年生パーティ。

 屋台が円形に並ぶ噴水広場付近まで来ると、肩車されているチビたちが騒ぎ始める。


「あ~あれね、フルレに来たら是非食べたいランキング1位だよ」


 フルレに何度か来たことがあるシェリーさんが言う。

 彼等が注目しているのは、カットフルーツを串に刺して凍らせたもの。

 常夏の地域ならではの、ひんやり凍結スイーツだった。

 屋台には丸い釜みたいな魔道具が置いてあって、それが冷却装置っぽい。


「はい、アルとセラも食べて」


 アトラスたちは予告通り、俺とセラフィナにも凍結フルーツを買ってくれた。

 パイナップルに似た繊維質の果実は、凍らせてあるのでシャリッとした歯ごたえになっている。

 口に含むと甘酸っぱい果汁が溶け出して、ひんやり感と共に広がった。


「美味しい~」


 セラフィナも涼しさと甘酸っぱさのコラボスイーツに大満足している。

 屋台の食べ物は庶民向きに作られた物だから、王族のセラフィナには初めて食べる物ばかりらしい。


 広場のベンチに座って凍結フルーツを食べた後は、アトラスたちの好奇心任せで様々な屋台を見て回った。

 この街の屋台には、花や果物を使ったスイーツ系の他に、魚介類を使った食べ物もある。

 俺はその中でも、吸盤がある赤いやつ、タコっぽい物に心惹かれた。


「おじさん、これはなんていう生き物?」

「こいつか? プゥルプっていう海洋魔物だよ。時々海岸に現れて、冒険者たちが総出で狩る大型の魔物さ」


 俺はタコっぽい物を売ってる屋台の人に聞いてみた。

 屋台のおじさん情報によると、巨大タコっぽい魔物らしい。

 冒険者たちが総出だなんて、かなりハイレベルな狩猟対象か?


 その話を聞いたのは、フラグだったのかもしれない。

 屋台見物の後、港とは反対側の海岸を観光しに行ったら、大勢の冒険者っぽい人々が走って行くのが見えた。


「プゥルプが出たぞ!」

「冒険者は狩りに参加してくれ!」


 地元の冒険者らしき人々が周囲に呼びかけながら走り去っていく。

 現役冒険者のバランさん、ヴァルトさん、マルカさんが、顔を見合わせて目で合図する。


「ミィファとセラはチビたちを連れてあそこの高台から見物してな。アルと学生たちは一緒に来てくれ」


 バランさんの指示で、俺は初めてダンジョン以外での狩りに参加した。

 ミュスクルさん、シェリーさん、ミニョンさんは、待ってましたって感じで頷いて駆け出す。


 整備された港とは正反対の、岩が多い自然のままの海岸。

 そこでは、巨大なタコっぽいやつがウネウネしていた。

 タコっぽいやつは巨大タコ壺を被っていて、足だけが見えている状態だ。


「お~、食べるとこいっぱいありそう」

「去年のよりデカイわね」

「あのタコ壺、去年より硬そうだね」


 そんな会話をする2年生パーティは、去年も狩りに参加したらしい。

 プゥルプ狩りは冒険者学園の生徒も参加が認められているんだとか。


「まずはタコ壺を一斉攻撃だ!」


 現場監督(?)っぽいオジサンがみんなに呼び掛けている。

 俺にとって初めてのプゥルプ狩りの始まりだ。

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