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第46話:タコパ?!

 スバルの記憶によれば、小麦粉の生地にタコと薬味を入れて焼き上げた球形の郷土料理を「たこ焼き」というらしい。

「タコパ」というのは、家族や友人で集まってたこ焼きを作って食べて楽しく談笑すること。

 スバルは何度か参加したことがあるけれど、僕はたこ焼きを食べたことすらない。


 フルレの街の人が言うタコパは、どんなもの?

 スバルの想像では、たこ焼きの屋台が複数出て、みんなで買い食いする感じ?

 その答えは、広場に着いたら明らかになった。


 プゥルプを倒した後、人々は噴水の近くに集まった。

 そこに設置されたのは、レールのように長い金属の板。

 板には半球状の窪みがたくさんついている。


(あ、ロングたこ焼き鉄板だ)


 スバルにはその鉄板が何に使われるかすぐに分かった。

 元の世界にあるたこ焼き屋の鉄板を縦に連結させたみたいなのが、広場に並べられていた。


「さあ、お待ちかね! タコパの始まりだぁ!」


 噴水を背に立ち、開始を宣言するオジサンがいる。

 人々は金属の板に沿って並んでいた。

 ところどころに置いてあるのは、プゥルプを小さく切ったものと、薬味やトロッとした小麦粉の生地。

 金属の板の下では、木炭が赤く燃えていた。


(ガチでタコパかよ! しかも大人数!)


 スバルが心の中でツッコんだ。

 街の住民や観光客や冒険者など、ズラリと並んだ人々が、調理を始める。

 人々はレードルを使って金属の板の窪みにトロみのある液状の生地を流し込み、プゥルプ肉と薬味をトングでつまんで生地の中に入れた。

 炭火で熱された鉄板が、窪みの中身をジリジリと焼いていく。

 ある程度焼けたところで、人々は手にした串の先で引っ張り上げるようにしながら、生地をクルリとひっくり返した。


「お、アルは初めてなのに手際がいいな」

「えっ? あ、うん。見てたら簡単に覚えられたよ」


 元の世界でたこ焼きを何度か作ったことがあるスバルの手つきを見て、バランさんが言う。

 一瞬ドキッとしたものの、スバルはなんとか適当に答えた。


「わぁ! ボールみたいになった~」

「面白くて、美味しそう!」

「これはね、タコヤキっていうジャポン発祥の食べ物なんだよ」


 大人のようには上手くできないアトラスたちの分を、マルカさんが説明しながら作ってくれた。

 ジャポンといえば、学食の人気メニューのオーク角煮の発祥地だ。


(やはりジャポン由来か。いつか行ってみたいなぁ)


 熱々のタコヤキにフーフー息を吹きかけて冷ましながら、スバルはそんなことを思っている。

 ジャポンという国は、国名も食文化もスバルの故郷に似ているみたいだね。

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