冒険者の国プレアの王都アベンティア。
僕にとっては故郷と言える場所で、セラフィナにとっては帰りたい場所だ。
僕たちを乗せた帆船が港に着くと、孤児院のみんなが手を振って迎えてくれた。
船員さんがアベンティアの湾岸警備隊に船の到着を報せる魔導通信を送っているから、都民にも告知されているんだろう。
『孤児院に帰るときは、お前が出ている方がいいぞ』
スバルはそう言って、僕と表層人格を交代してくれた。
ソフィエもセラフィナを表に出したらしい。
セラフィナはメシエでは表に出ることを拒否し続けていたけれど、海に出てからは少しずつ出てくるようになっている。
僕とセラフィナが船から降りて桟橋を通り、送迎の人々がいる広場まで歩いていくと、ミィファさんが誰よりも早く駆け寄って、僕たちを2人まとめて抱き締めた。
「おかえり! 2人とも怪我は無い? 具合が悪かったりしない?」
「大丈夫だよ」
「うん……」
ミィファさんは真っ先に僕たちの健康状態を聞いてくる。
僕もセラフィナも身体に異常は無いことを伝えた。
「おかえり!」
「アル、その白い服って勇者様の服?」
「セラのお洋服、聖女様みたい!」
アトラスたちは、僕たちが着ている服に興味津々だ。
法王様から、謁見の際に着た正装を着て船から降りるように言われたので、僕は白い騎士服、セラフィナは白い法衣を着ている。
どちらの服も背中に金色の糸で翼の刺繍が施されているのは、光の神の加護を表わしたものだと聞いた。
「おかえり、まずはゆっくり休んで、明日は俺と一緒に国王様に会いに行くぞ」
「「はい」」
穏やかに微笑むバランさんに言われて、僕もセラフィナも頷く。
神聖王国メシエで勇者として公式発表されたことは、他の国々にも伝えられているとミセジ神官から聞いていた。
セラフィナも聖女として公式発表されたから、他国にも伝わっているらしい。
港に集まる人の数は普段よりも多く、来れる人はみんな集まったみたいな感じがする。
人々の視線は、船よりも僕たちに向いていた。
「さあ、みんな家に帰りましょう。今日は御馳走よ」
「「「はーい!」」」
「早く食べた~い!」
「行こう行こう!」
「あんまり急ぐと転ぶぞ~!」
ミィファさんが笑顔で言うと、アトラスたちが一斉に駆け出す。
バランさんが大声で言ったけど、あれは多分聞こえていないね。
やれやれという感じで歩き出すミィファさんとバランさんに続いて、僕とセラフィナもミィファさんが言う「家」へ向かった。
「家」っていうのは、孤児院のこと。
住んでいるみんなに血縁関係は無い。
でも、僕たちにとっては帰るべき家で、大切な家族なんだ。