目次
ブックマーク
応援する
7
コメント
シェア
通報

第2話 バラ色の……ユリ色の学園ライフを手に入れてやるっ!

「は~い、みなさ~ん。ラブちゃんと仲良くしてあげてくださいねぇ♡」


「だからオレはラブちゃんじゃねぇ! ガクって呼んでくれ……って、完全にラブちゃん呼びが定着してやがる……」


 そこかしこから「ラブちゃん」コールが⁉ なんだこの黄色い歓声は!

 みんながオレに注目してやがる……。

 熱い視線を感じる……何だこれ……何だこれ……正直気持ち良すぎるじゃねぇか!


 行けるのか⁉

 オレでも行けちゃったりするのか⁉

 お持ち帰りしちゃう⁉ 今日卒業しちゃう⁉


「ラブちゃんどうしますかぁ? 今『ラブちゃん』って呼んだ子をみ~んな泣かせて、記念すべき101校目に転校しますかぁ?」


 この先生……全部見透かしたような笑顔で……腹立つわー。 


「もう好きにしろ!」


 ああいいさ! もうちょっとだけこの学園にいてやろうじゃないか!

 そしてバラ色の……ユリ色の学園ライフを手に入れてやるっ!



「だがよ、先生。このクラス……ちょっとばかり生徒の人数が多くねぇか? 普通1クラスは30人から40人くらいのもんだろ? 軽く倍くらいはいるよな? 視線の圧力がすげぇ……」


 なんていうか、教室がかなり広いよな?

 100校見てきたオレだからその違いに気づくのかもしれないが、普通の高校の教室は、こんなふうに大学の講堂みたいにすり鉢状になっていないからな? 1人1つ机があるにはあるが、1番奥の生徒は階段を5段くらい上がったところに席があるし……。すっげぇ見下ろされているわ……。あ、目が合った。ゆるふわパーマでかわいい……。お近づきになりたい……。手を振ってきた! オレのこと好きなの⁉


「うちの学園は1クラス100人でやっているのよぉ♡ 密集隊形で授業を受けたほうが気持ちいぃぃぃでしょぉ♡」


「100人って……いや、マジでここは大学か何かなのか?」


 大学付属の高校だからこういうスタイルになっているとか?


「え~、先生が大学生に見えちゃうってぇ? やだもう、ラブちゃんお世辞がうますぎよぉ♡」


 急に脚立のてっぺんに座って、クネクネダンスを披露しだす米粒先生。


 いや、ぜんぜん見えませんけど? ギリ小学生……気を抜くと幼稚園生くらいだな……。って、この先生の奇行を見て、クラス全員で完全に無視かよ……。もしかしてこれ、日常茶飯事?


「いやんもう♡ 花の女子大生が授業を始めちゃおかなぁ♡ 1時間目の授業はHRでぇ、次の百合百合祭――文化祭でのクラスの出し物について話し合う時間だからねぇ♡」


「なあ、おい……」


 クネクネしながら話を先に進めないでくれ。


「なぁに、ラブちゃん? 先生のことはハニーって呼んでくれて良いのよぉ?」


「それは……遠慮しておきます……」


 何らかの児童暴行的な罪で捕まりたくないので、年下には手を出さないように気をつけているんだ。悪いな。

 そんなことよりオレ、自己紹介した後からずっと黒板の前に立ったままなんだが? このまま授業に入るのはやめてくれないか?


「授業に入る前に、オレの席がどこなのかを……」


「忘れてたわぁ。ラブちゃんの席はどこかなぁ~? 空いている席、空いている席~」


 米粒先生が脚立の上に立って教室を見まわし始める。


 おい、脚立の上に登ったら危ないぞ⁉

 って、うるせーーーー!

 何だ、お前ら⁉ 一斉に騒ぎ出しやがって!


 え、オレを隣にって呼んでやがるのか?

 めっちゃうれしい……けど、お前らの隣、席空いてねぇじゃん。


「は~い、みなさんお静かにぃ」


 米粒先生が手を叩いて生徒たちの注目を集める。

 ちなみに、先生はずっと脚立のてっぺんに立ったままだ。真下に立っているオレには、黒のレースのスケスケなアレがずっと丸見えなわけだ。ふんわりしたワンピースなので、おへそまでガッツリ見えている。その下着のチョイス……幼稚園生ではないのは認めよう。だがな……腰のくびれがなさすぎだよ。


 おい、ちょっと待て。

 誰だ今の!


「オレのことをラブラドールレトリバーって呼んだヤツは! 本名より長くなっちゃってるだろ……」


「えっとぉ、ワンちゃんのお席は~」


「おい、ラブラドールに引っ張られてるぞ」


「空気嫁ちゃんの席は~」


「それはラブドールって、ボケが強引すぎるだろ!」


 なんなんだ、この米粒先生は。


「空いていないみたいだから、ラブちゃんの席は先生のお膝の上ね♡」


 もう絶対ツッコまないぞ。


「ラブちゃん、早く座ってぇ♡」


 脚立の上にちょこんと座るな。

 普通に危ないからな?


 って、いけない。無視無視。

 いやいや、この教室の生徒たち、やっぱりおかしくね?

 なんで「私の膝に座ってー」ってあちこちで声が上がってるの? なんなの? ホントにみんな百合の人たちなの? うれしいけれど、このクラスの風紀は大丈夫なの?


「え~んえ~ん。先生フラれちゃったみたいだから、ラブちゃんの席は……イインチョーのメグミちゃんの隣が空いているからそこね……グッスングスグスグスリンコ」


「はいわかりましたー。ありがとうございますー」


 さっさとこのヤバい先生から距離を取ろう。

 オレの席は委員長のメグミちゃんの隣、と。


 席が空いているのは……お、あった。あそこかな?

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?