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第4話 両手にバナナ持って踊ってんじゃねぇよ!

 キーンコーンカーンコーン。


 ひどい目に遭った……。

 まさか転校初日の授業中にシュウマイで窒息死させられかけるとは思わなかったぜ……。って、オレはいったい何を言っているんだ?



「みなさ~ん、無事百合百合祭の出し物が決まったところでぇ」


 えっ、いつ決まったの⁉

 お前ら、ずっとシューマイ弁当食べてなかったか⁉


「2時間目は移動教室ですよぉ。エプロンと三角巾は持ってきていますかぁ?」


 えっ、エプロンと三角巾? 調理実習的なやつか?

 そんなの聞いてないが……。


「あれあれぇ? ラブちゃんはエプロンと三角巾を持ってないんですかぁ?」


 米粒先生が近寄ってきてオレの脇腹をツンツンしてくる。


「持ってないです……けど……初日だし……事前に持ち物とか聞いてなかったので……」


 それに学校とか、どうせすぐにサボるつもりだったし。とは言えない。


「そっかぁ。転校初日だもんねぇ」


 米粒先生が「うんうん」と頷いてみせる。

 そうですよー。初日だからね。学園の備品を貸してくれるとか?


「バケツを持って廊下に立っているだけで許してあげるね♡」


「昭和の罰!」


 いや、大目に見てっていうか、予備のやつか何かを貸してくれよ!


「バケツの水はギリギリいっぱいまで注ぐのよぉ。もしこぼしたら停学だからねぇ」


 容赦ないな! そんなでかいバケツに水をギリギリいっぱいまで入れたら、そもそも重すぎて持ち上がらんわ!


「せんせぇ! ミナミのエプロン貸してあげてもええよ~? 予備で30着持ってきとるし~」


 ありがたい!

 えーと、ミナミちゃん? 予備に30着も持っているって、エプロン屋さんか何かを営んでるのかな⁉


「そぉ? それなら特別にバケツはなしにしてあげようかなぁ。残念♡」


 生徒への罰がなくなったのを残念がるな!


「サンキュー。助かったわー。ちなみに、名前は何ミナミちゃん?」


 米粒先生ほどじゃないが、ミナミちゃんも背が低いな。体も華奢で黒目がちで同級生には見えない! 後輩女子みたいだな。んー、無条件で守ってあげたくなる! 関西弁の後輩女子系の同級生……ならギリ手を出しても合法だろ!


「ラブちゃん違うッショ。ミナミちゃんの名前は南野シマ。ミナミは苗字ッショ」


 おお、学級委員長のオシイセイコちゃんまだいたのね。

 解説ありがとうッショ。


「南の島……ってか。ハハハ」


 ご両親の悪ふざけでつけられた名前かな。きっと小学生くらいの時にはいじめられただろうな。かわいそうに。って本名が『学園ラブコメ』のオレの親のほうが頭おかしいわな。オレ? いじめられてねぇよ? いじめられるのを見越して、小学校の時は不登校だったもん。


「南野シマやで~。気軽にミナミちゃんって呼んだってや~」


 そう言って小さく手を振るミナミちゃん。

 うむ、非常にかわいい。


「そうそう、ミナミちゃんはね~」


 セイコちゃんが、ニヤニヤしながらオレの腕に絡みついてくる。

 ううーん、ボリュームがやや足りないな。やっぱりセイコちゃんはキープで!


「5留しているから、21歳ッショ」


「セイコちゃん! ミナミの年齢のことは言わへん約束やんか~」


「まさかの超年上⁉」


 合法ロリ⁉


「ちなみにコメコ先生は今年で39歳ッショ」


「ウッソ⁉」


 超合法ロリ⁉ ていうか熟女レベル⁉

 あんなにちっちゃいのにアラフォーってマジか⁉ まだ2歳くらいでは⁉


「グッスン……。みなさんに大変残念なお知らせですぅ。長らく学級委員長を務めてくれた松多セイコちゃんですが、先生の機嫌を損ねた罪で、本日をもって退学が決まりましたぁ」


「年齢をバラした罪に対する罰が重すぎる!」


「あちゃ~。私退学になっちゃったッショ~!」


 おでこを「ポン」じゃないよ。

 その「やっちゃったー」みたいなリアクションおかしいだろ。


「いや、なんでそんな軽いテンションなんだよ? あ、もしかして、しょっちゅうやっているこのクラスのノリなのか?」


 なんだ、そういうことなのか? みんな和やかな雰囲気だし、オレだけマジに捉えちまったぜ。冗談なら冗談って誰か教えてくれよな。恥ずかしいじゃんか。


「セイコちゃん……これ、急いでみんなで寄せ書き書いたから! 退学になっても強く生きてね!」


 黒髪ボブカットの女の子が駆け寄ってくる。

 なんだなんだ⁉ すげぇ……胸がめっちゃくちゃに揺れてやがる! バインバインじゃん!


「マリモちゃん……ッショ……」


 マリモ? あー、顔も丸顔で、髪型もお団子ヘアで、全体的にマリモっぽいな? でも胸のマリモが1番すごい……。って、あれ? セイコちゃんの退学ってマジなやつ?


 いやいや、待て待て! 寄せ書きって普通は真ん中に似顔絵とか描かねぇ? その立派な手形は誰のだよ⁉ 引退する力士なの⁉


「マリモちゃんのマリモをマリマリできなくなると思うと……ッショ」


 マリモちゃんのマリモをマリマリ?

 解読班頼む!


 はい、全員無視!

 メグミちゃんは両手にバナナ持って無言で踊ってんじゃねぇよ! おとなしい系のキャラじゃねぇのかよ! そのギャップ、かわいすぎかよっ!


「もうっ! セイコちゃんったらエッチ♡」


 ねぇ、マリモをマリマリってエッチな行為なの⁉

 ねぇねぇ、まさかと思うが、胸のマリモをマリマリするってことなの⁉


「マリマリマリマリマリマリマリマリマリマリッショ!」


 あー……マリマリって、マリモちゃんの頭のお団子におでこをこすりつける行為か。普通に余裕で健全だったわ……。微妙にラブい空気は何だったのか……。期待させるだけ期待させやがって……。金返せこのやろう!


「セイコセイコセイコセコセコセコセコセコセコ!」


 ちょちょちょちょちょ! そこをそうするのはアウトだろ!

 びっっっっくりしたわっ! マリマリからの落差よ! そういうのは2人きりのところでやって⁉ 急に教室でホントびっくりするわ! って、みんな、驚きなし? いつもやってんの、この2人? マジ? この教室の風紀大丈夫かよ……。


「ラブちゃん……ッショ」


「お、おお……もうマリマリするのは良いのかよ……?」


 あー、えーと……今の流れでオレに話しかけてこないで?

 転校初日に退学者が出て……しかも衝撃のセコセコを見せられて……どんな顔してここにいれば良いのかわからないからさ……。


「次の学級委員長はラブちゃん、お願いッショ……」


「ちょ待てぃ! さすがにその人事はおかしいだろ! オレ、転校してきたばっかりだからさ……。悪いけど、ほかのヤツに譲ってくれないか? ほら、マリモちゃん、とか? 仲良いんだろ?」


 マリマリセコセコする仲だし?


「マリモちゃんは風紀委員長だから学級委員長をやるのは無理ッショ」


 オーノー! 学級委員長と風紀委員長が率先してクラスの風紀を乱していたのかよ!

 いっそのこと、このタイミングでマリモちゃんも風紀委員長を降りたほうが良くないか?

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