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第5話 やっぱり相撲部屋じゃねぇか!

「ここは先生がビシッと、次の学級委員長を決めちゃおうかなぁ」


 おう、先生が指名してくれればみんな恨みっこなしだな。

 だけどオレだけは除外してくれよ? まだ転校してきたばっかりなんだしさ。


「だ~れ~に~し~よ~う~か~な~。て~ん~の~か~み~さ~ま~の~い~う~と~お~り~」


 全然ビシッと決めてねぇじゃん。

 まさかの神頼みかよ……。それにさ、その数え歌のやつだと、たぶん100人分回らないぞ?


「バン・バン・バン! はい、ミナミちゃんに決定だよぉ!」


 ほらな、手前にいたヤツで終わるよな。めっちゃ不公平感あるー。


「ミナミが学級委員長~? センセ~、そないな大役、ミナミには無理やわ~」


 そりゃあ嫌だよな。


「大丈夫大丈夫。ミナミちゃんが1番年上なんだからいけるってぇ」


 おいおい、先生だけは年齢のことを言ってくれるなよ。

 自分の年齢をバラされたことに激怒して、セイコちゃんを退学にさせたヤツが言って良いセリフじゃねぇぞ?


「でももうお肌の曲がり角やし~」


 それはたぶん学級委員長には関係ない。


「それにセイコちゃんみたいに厚顔無恥やないし~」


 ミナミちゃん、何気にめちゃくちゃひどい!

 セイコちゃん本人がいる前で、それよく言ったな⁉ いや、いなくても言っちゃダメだけどな⁉


「そうそう、わたしって厚顔無恥ッショ~」


 えっ? セイコちゃん、それ自分で言っちゃうの⁉ ちゃんと意味わかっている? ぜんぜん誉め言葉じゃないよ?


「んん~、じゃあもうめんどうだから、学級委員長はセイコちゃんのままでいっかぁ」


「センセ、それナイスアイディアやんか~! やっぱりこのクラスの学級委員長はセイコちゃんにしか務まらへん思う~。ね~、セイコちゃん!」


「そうかな~ッショ? ここはやっぱりわたしが一肌脱いじゃうッショ!」


 いや、セイコちゃん退学決まっているから、もう学級委員長は……。


「退学しても名誉学級委員長ってことでやっていくッショ!」


 名誉……学級委員長……?

 聞いたことない制度だな。


『名誉! 名誉! 名誉! 名誉!』


 いや、お前ら、それ、何のコールなの?


「さすがセイコちゃんねぇ! みんなの信頼も厚いし、ここは特別に名誉学級委員長としての復学を許可しちゃいまぁす!」


 こうしてあっさりと松多セイコは復学した。

 やっぱりさっきの退学劇は茶番だったか。


「どもども~ッショ。退学になって寮を追い出されたらどうしようかと思っていたッショ~。首の皮一枚繋がって助かったッショ~」


「そうか、この学園って全寮制なんだよな。つまりこのクラスの生徒は全員寮住まいってことか」


 全寮制の学校は初めてだ。

 毎日ワイワイ、修学旅行みたいなものなのかな?


「そうッショ~。みんな同じ部屋ッショ~」


 ん?


「同じ部屋……? 寮って、2人部屋とか4人部屋とかじゃ……?」


 クラス全員同じ部屋ってどういうことだ……?


「100人部屋ッショ~」


「相撲部屋かよっ!」


 生活環境劣悪だな、おい!


「みんな一緒のほうが楽しいッショ? ね~、マリモちゃ~ん?」


「うんうん、夜中にマリマリセコセコするのもすぐだし~♡」


「周りに迷惑だから夜中はやめなさい!」


 いや、昼間もやめなさい!

 あんなの四六時中見せられたら、みんな変な気持ちになっちゃうでしょ!


「じゃあぶつかり稽古だけにしておくッショ」


「やっぱり相撲部屋じゃねぇか!」


「ううん、夜のぶつかり稽古♡」


 下ネタ全開かよ!


「誰かー! この2人を不純同性交遊で退学にしてくれー!」


 うらやま警察の人きてー! 即刻きつい罰を与えてー!


「大丈夫大丈夫~♡」


 マリモちゃんがニコニコしながら頭のマリモをオレの顔に押し当ててくる。

 これがマリマリ……。なんかめっちゃ良い匂いする……。


「なにが……?」


「ラブちゃんも今夜から一緒にぶつかり稽古しようね♡」


 えっ……マジで?


 …………マジで良いの?


「うんうん♡」


 やったーーー!

 父さん、母さん、今夜オレはとうとう大人になりますっ!


「ラブちゃんも同じ部屋だもんね♡」


 100人部屋最高ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


「あ~、そのことなんだけどぉ」


 米粒先生が話に割り込んでくる。


 まさか、このタイミングで不純同性交遊が取り締まられるのか⁉

 やめて⁉ せめて今夜だけは見逃して! オレが大人になるまではぁぁぁぁ!


「残念だけど、ラブちゃんだけは別の寮なのよねぇ」


 大きなため息。


「えっ、なんで⁉」


 仲間外れにしないでオレも100人部屋に入れてくれよ!


「そうなんですか? 寝ているラブコメさんに、無理やり私のバナナを咥えさせたりしようと思っていたのですが」


 二刀流よろしく、両手に立派な緑色のバナナを装備したメグミちゃんがしかめっ面で迫ってくる。


「めめめメグミちゃん⁉」


 オレ、まだ経験ないから……いきなり道具使ったり、ハードなのはやめてよね?


「そうなのよぉ。入学手続きのアンケートでぇ」


 なになに? オレ何かやらかした⁉ 書類不備で寮に入れないとかなのか⁉


「まさかラブちゃん……あのアンケート……やらかしたんか……?」


 ミナミちゃんが震える手でオレのことを指さしてくる。


「えっ、マジで何⁉ オレ、何も思い当たる節がないんだけど……」


 やらかし? アンケートで⁉


「てことはラブちゃんだけ一般寮ってことッショ……?」


「あれで選択肢を間違える人なんているんですね! せっかく用意した立派なバナナが無駄になってしまいました」


 しょんぼりメグミちゃん。両手のバナナも黄色くしなびて……。

 って、一般寮って何? どういうこと?


「ラブちゃん、アンケートの1番下のところで『なぁ……スケベしようや……』って質問に『いいえ』って答えたッショ?」


「え、ああ、たぶん……?」


 なんだこれ、って思った記憶はある、な……。

 そこまでは普通にアレルギー有無や既往歴なんかを訊かれていたのに、最後の質問は印刷ミスか何かか……? って感じだったわ。


「ラブコメさんは、スケベしたくない人なんですか?」


 メグミちゃん、真顔で何を訊いてきてるの?


「えっ、それを訊かれると……」


 もちろんしたくないわけないんだけど……。


「あ~あ~。ラブちゃんとゼンラ寮で朝から晩までぶつかり稽古したかったなぁ」


 ホワッツ?

 マリモちゃん、今なんて言ったの?


「ゼンラリョー?」


 オレの聞き間違いかな?


「全裸寮♡ いつでもどこでも全裸で過ごす全裸寮だよ♡」


 ……は?


 全裸で過ごす……寮?


 ソレナンテ・エ・ロゲー……?


「もしかしてみんな……あの質問に『はい』って答えているのか……?」


「当たり前です」


「当然ッショ」


「常識やな」


「エッチ♡」


 いや、オレは普通に『いいえ』って……え、クラス全員『はい』を選んだってこと⁉ あの質問を読んで『はい』を選ぶことなんてある⁉ やっぱりこのクラスのやつら、全員頭どうかしてるぜ!


「ちなみにあの質問に『はい』って答えると……?」


「全裸寮に入寮決定です。『いいえ』を選択すると、伝説の一般寮という未開の地に放り込まれると聞きます」


 未開の地⁉

 誰も行ったことがないってこと⁉


「だけどみんな制服……普通に着ているよな……?」


 ははーん。さては全員でオレをからかおうとしているな?

 その手には乗らんぞ!


「学園の中ではね♡」


「寮で制服着てたら、退学になるッショ」


「寮の敷居をまたぐ瞬間に全裸になる決まりです」


「えっ、マジなの? ドッキリじゃなくて……?」


 さすがにウソですよね?

 そろそろネタばらしして? 


「先生もぉ、みんなと一緒の全裸寮暮らしよぉ♡」


 39歳の合法ロリ先生が全裸で……?


「もしもしポリスメン? ここに痴女が出ました」


「ちょっとラブちゃんひどぉ~! 先生まだピチピチのギャルギャルだからぁ! それと、学園内は私有地だから警察も立ち入り禁止だよぉ」


 私有地でもやって良いことと悪いことがあるでしょ!

 全裸寮ダメ、ゼッタイ!

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