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第7話 お前ら、バナナ部とエプロン部はどうした……

 お盆にティーカップを乗せて、メグミちゃんが戻ってきた。


「売上を3等分にしてください。もちろんタダでとは言いません。私もエプロン販売に協力させていただきます」


 タイミング良すぎ……っていうか、ずっと話を聞いていたんだろうな。


「メグミちゃんも協力してくれるんか~。話、聞こか~」


 ミナミちゃんはバナナボートにどっかりと座り込んで足を組んだ。


 部室にソファ代わりのバナナボートって……。

 バナナ部、徹底しているな……。


「まずは私もエプロンモデルとして参加しましょう」


「ええやんか!」


 おお、メグミちゃんがモデルさんになれば、ロ〇コン以外にも需要が出てきそうだな。でも顔を隠しちゃうのか……。


「顔はバナナで隠します」


「それはあかん。コメディーになってまう」


 ミナミちゃん、冷静に判断できてえらい。


「では販売特典としてバナナを1房つけます」


「生物はトラブルになるからあかん」


 そうだな。郵送されたものを食べて、もしお腹を壊したりしたら大変なことになるからな。


「それではオリジナルのバナナソングを――」


「メグミちゃんのモデル協力だけ採用や!」


 最後まで言わせてもらえない!

 ていうか、バナナソングって何だよ……。めっちゃ気になるじゃんか……。


「それではさっそく全裸バナナエプロンで撮影を――」


「全裸はあかん」


 そうだな。ギリ健全で運営している販売サイトだし、女子高生の全裸は完全に違法……。


「ここは部室棟や。寮に戻ってから撮影しよか」


 ぜんぜん違ったわ。


「お前ら……全裸写真をサイトに載せたら、オレが即通報するからな?」


 それだけはオレNGな。


「わかりました。全裸にはならないと誓います」


「せやな。全裸はなしにしよか」


 当たり前すぎる誓いを立てられてもな……。

 普段から全裸寮で過ごしているせいか、感覚バグってないか? いや、そもそもホントに全裸寮なんて存在するのか……?


「それではラブコメさんが部長ということで、さっそく新部設立の申請をしに行きましょう」


「せやな。ラブちゃんが部長なら安心やで」


 この2人はサラッと何言ってやがるんだ?


「お前ら、バナナ部とエプロン部はどうした……」


「退部します」


「退部するで~」


 そんなあっさりと……。


「そんなことしたらほかの部員にも迷惑が……って、エプロン部は1人なんだっけか。バナナ部は……」


 バナナ部も1人だろうな。

 何する部活なのか知らんけど。


「グループチャットで退部の挨拶をしました」


 えっ、グループチャット参加人数15312人⁉

 めっちゃ大所帯じゃん! ぜんぜん1人の部活なんかじゃなかったぁ!


「メグミちゃん、バナナ部の部長さんなのに平気なんか?」


「そうだよ、メグミちゃんって部長じゃんか」


「平気です。部長が卒業、または退部をすると、自動的にその部活動は解散になりますので何も問題ありません」


「問題ありまくりぃ! そんなことしたら、残されたバナナ部の部員15311人が路頭に迷うだろうが!」


 そんなひどいことするなよな!


「せめて誰かに部長を譲る手続きとかな……」


「いいえ。私以上にバナナ部の部長に適任の人材はいませんから」


「だったら辞めるなよ!」


「ですが……」


 メグミちゃんが困ったように、オレの顔をチラチラ見てくる。


「ですがなんだよ?」


「バナナ部を辞めないと、ラブコメさんと同じ部活に入れないじゃないですか」


「えっ……」


 頬を赤く染めて……そんな……?

 メグミちゃん、まさかオレのことが……?


「ミナミもラブちゃんのこと好きやで~。一緒の部活に入りたいやんか~」


「わ、私は別にラブコメさんのことが好きなわけでは……。同じクラスですし、隣の席のよしみで……」


 メグミちゃんって、案外ツンデレさんなのか⁉

 顔が真っ赤でめっちゃかわいい……。


 好き。


「ミナミも仲間に入れて~な!」


「あ、ああ、もちろんミナミちゃんも一緒だ!」


 タイプがぜんぜん違う2人だけど、ミナミちゃんの人懐っこい感じも好きだわ……。


「苦渋の選択でしたが、隣のクラスの葉奈菜ばななナナさんに部長をお譲りしました」


「めっちゃ部長に向いてそうな名前のヤツいたー!」


 もうバナナ部に入るために生まれてきたような名前ー!


「それではあとは退部届と新部設立の書類を出すだけですし、行きましょうか。これでお世話になったバナナ部の部室ともお別れです」


 メグミちゃんが名残惜しそうに、バナナの木を撫でていた。


「メグミちゃん……」


 やっぱりバナナ部にいたいんじゃ……。

 無理しなくてもオレとミナミちゃんの2人で新しい部活は作って、そこに遊びに来るだけでも――。


「餞別代わりにバナナは全部いただいていきましょう」


 言うが早いか、メグミちゃんは部室に生えているバナナの木から根こそぎバナナをもぎ取ってカバンに詰め込んでいく。


「めめめメグミちゃん⁉」


 それは窃盗!


「問題ありません。部員なら誰でも食べ放題なので、規定に違反はしていません」


「まだ退部はしていないからたしかに……。ってそういうことじゃないだろ! 倫理的にアウトだろ!」


「それにバナナ部は、私以外、全員幽霊部員ですし、誰も困る人はいません」


「部員1万人以上いるのに⁉」


 おかしいと思ったんだよな!

 こんな1LDKみたいな部室に、部員が1万人も入るわけないしな!


「これで大丈夫です。あらかたバナナと金目のものは回収しました」


 それ、絶対大丈夫じゃねぇだろ……。

 あとで新部長のバナナさんと揉めても知らんぞ?


「待ちくたびれたわ~。早ぅ、生徒会室行こうや~」


 ミナミちゃんはバナナボートにまたがって飛び跳ねて遊んでいた。


 あ、そのバナナボートも新しい部活に持っていくの?

 そうなるとこの部室、すっからかん状態だけど、ホントに大丈夫なのか? むしろバナナの木だけ残したら、世話する人がいなくてかわいそうじゃね?


「朗報です。葉奈菜ばななさんに交渉し、この部室ごと私たちの新部に譲っていただけることになりました」


「えっ、それでバナナ部大丈夫なの⁉」


 これでバナナの木の命は守られたのだ……。

 さっきバナナは根こそぎもがれたけどな。かわいそうに。


「どうせ幽霊部員しかいないので、うちのクラスの教室の掃除用ロッカーで良いそうです」


「そこは部室として承認されないだろ……」


「今しがた、申請が通ったそうです」


 この学園、なんでもありなのか……。


「それでは箱詰めした備品をもとに戻すのを手伝ってください」


「へいへい。ミナミちゃんも頼むわ~」


「ミナミは、エプロン部の部室からこっちにものを移してきてもええ?」


「はい。隣の部屋が倉庫部屋になっていますので、普段使わないものはそっちに移動をお願いします」


 倉庫部屋もあるの⁉

 まあそうか、1万人も部員がいるんだもんな。幽霊部員だったとしても、なんだかんだでそれくらいスペースは必要か。


「おおきに~。ほな行ってくるわ~」


 ミナミちゃんがバナナボートを降りて、部室から出ていこうとする。


「ミナミちゃん、エプロン部のほうから運ぶものがいっぱいあるなら、こっち終わったら手伝いに行くぞ」


「助っ人頼んだから平気やで~」


「あ、そう? それならいってらー」


 助っ人か。

 エプロン部には所属していなくても、人懐っこいミナミちゃんには友だちは多そうだしな。あの様子なら心配ないか。


「ラブコメさんは隣の倉庫部屋のバナナの木に水を上げてきてくれませんか?」


「お、おう。まかせろ」


 隣の倉庫部屋にもバナナの木が植えてあるのか。

 さっきバナナは回収していなかったような……。



「って、おーい! この部屋どうなってるんだー!」


 完全にバナナ農園じゃねぇか!


 すっげぇ量のビニールハウス!

 隣の部屋ってレベルじゃねぇぞ! 明らかこっちのほうが広さ的にメインじゃねぇか! 縮尺おかしいだろ!


 あれ……奥のほうに……何かあるぞ?

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