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第9話 盗聴器⁉ なんでそんなものがオレの服から⁉

 ちょっと待って?

 メグミちゃん……今、「姉さん」って言ったか?


【メグミ~。ネタばらし早いわよ~】


「ラブコメさんが泣きそうになっていたのに早いも遅いもありません」


 泣きそうにはなって……ないよ? ぐっすん。


「ラブコメさん、女神の正体はこれです」


 メグミちゃんがバラバラになった祠の破片の中から、小さな黒いチップのようなものを取り出してきた。


「これは……小型のスピーカー?」


【いえ~い、学園ラブコメちゃ~ん、私の声、聞こえてるぅ~?】


「スピーカーやんけ! わざと音質を落として神秘的な感じを出しているが、スピーカーやんけ!」


 オレはこんなおもちゃに騙されていたのか……。

 本気で呪われるって思ったんだぞ! おもらしとか、リアルな呪い出してくるなよ!


「姉さん、もういい加減姿を現してください」


【え~、もうちょっと引っ張っても罰は当たらなかったんじゃないの~?】


「神様の祠を使っていたずらしていた時点で罰当たりなんだよ!」


 手遅れだわ。

 お前が呪われておもらししろ!


「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん! あなたの女神がただいま参上だよ♡」


 壊れた祠の隣にあった物置の扉が開く。

 うわー、そこにいたのかよ。ぜんぜん気づかなかったわ……。普通にビニールハウス関連の道具が入っているって固定観念が。目が滑ってスルーしていたわ。


「って、メグミちゃんが2人⁉」


 えっ、どういうこと⁉

 ドッフルギャンガフフフフフフフフ?


「改めましてやほほのほ~。私の名前は委員蝶野いいんちょうのメガミ。メグミの双子の姉でぇす♡」


「双子……?」


 マジでそっくり……。

 ある一部分を除いて……。


 お姉ちゃんの胸しゅごいれす……。


「ラブコメさん、キライです」


「オレ、まだ何も言ってなくね⁉」


 メグミちゃんから、軽蔑のまなざしを超えた絶対零度の視線がオレを凍りつかせる。

 だってさ、見ちゃうの仕方なくね? 2人が並んでたら間違い探ししちゃうの仕方なくね? サイゼの間違い探しより2兆倍くらい簡単なんだぜ⁉


「ラブコメさん、気をつけてくださいね。姉さんは遊び人ですから」


「メグミちゃんひどい~。どいひ~。私遊び人なんかじゃないよ! ちゃんとまじめに生徒会書記の仕事してるもん。ぷんぷん! ぷんすかぷん! どんすかどんすかどんどんどん!」


 急に歌い出さないで?

 ギリギリ攻めるのはやめておこう?


「って、メガミって本名?」


「そうよ~。私にピッタリでしょ♡」


「そ、そうっすね……」


 委員蝶野メガミか……。

 いやー、すげぇな、2人の親は。自分の子どもにメガミってつけるテンション! 産後ハイ的なあれなのか⁉ 双子だし効果も2倍だ! でもメグミちゃんの名前は普通だよな。


「私たち、メガテン姉妹をよろしくね~ん♡」


「メガテン?」


「女神と天使のように美しくてかわいくてスタイル抜群な姉とその妹ってこと~」


「よし、メガミちゃんは1回メグミちゃんに謝ろっか?」


「なんでよ⁉」


 さすがに妹とは言ってもね?


「ラブコメさん、大丈夫ですよ。私は慣れていますし、姉さんの相手をまともにしていたら疲れるだけなので、ラブコメさんも適当に聞き流したほうが良いです」


 メグミちゃんは達観しているなあ。

 まあ、こういうタイプの人は一生このテンションなんだろうし、適度な距離感で付き合わないとこっちが疲れるっていうのはわかるかもな。オレは美少女は好きだが、必要以上にはしゃいだりうるさい子はちょっと苦手だ……。


「な~が~さ~な~い~で~。もっとかまってかまって~♡」


 この姉は相当にうざいなあ。

 これを見て、物静かな妹が育ったってことか……。反面教師って大事なんだな。


「私は部室の片づけがあるのと、そろそろミナミさんが戻ってくるでしょうから、その相手もしなければいけません。ラブコメさんも姉さんのことは適当に戻ってきてください。新部設立の書類を出しに行かなければいけませんから」


「も~、メグミちゃん冷たい~。お姉ちゃんがわざわざその書類を取りに来てあげたのに~」


 メガミちゃんが口を尖らせてブーイングする。


 そうか、メガミちゃんは生徒会役員だから。

 って、オレたち新部設立を決めたのはついさっきなんだが、どこで知ったんだ⁉


「ラブコメさん、首筋の、襟の下のところです」


「ん? 襟の下……? 何だこのシール?」


 小さな黒いシールが?


「盗聴器です」


「盗聴器⁉ なんでそんなものがオレの服から⁉」


 怖っ!


 えっ、怖っ⁉


「おそらくコメコ先生の仕業でしょう。コメコ先生は姉さんの恋人ですから、姉さんの言いなりですし」


「えっ⁉ ウッソ⁉」


 今さらっと言ったけど、まさかの教師と生徒の禁断の恋⁉

 中身は39歳だけど、外見は2歳の米粒と⁉ 下着だけ黒のスケスケのあの女教師と恋人関係⁉


「姉さんはロ〇コンですから」


「人聞き悪い~! 小っちゃくてかわいい子が好きなだけ~!」


「それを世間ではロリ〇ンと……」


「違うもん! ラブコメちゃんのささやかな胸も、メグミちゃんの慎ましやかな胸も好きよ?」


 ほっとけ!

 オレはそういうのは良いんだよ! なれるもんなら今すぐにでも男になりたいからな。

 ……でもメグミちゃんはそんなに小さくはないような? メガミちゃんがでかすぎるだけなのでは?


「姉さんは自分よりもサイズが小さい女性なら誰でも良いらしいです」


「それ、ストライクゾーン広すぎじゃね?」


 世の中の女性の9割くらいが該当する気がするんだが?


「世界中のかわいい子が私の周りに集まってきますように~」


 壊れた祠の残骸に祈りを捧げるな! 罰当たりめ!


「というわけで~、ラブコメちゃん野球拳しよ♡」


 は? 急に何言ってんだ?

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