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第10話 昨日助けていただいた時まではフサフサだったツルで~す♡

「だから野球拳よ? 知らないの?」


「一応、知識としてはあるが……」


 じゃんけんして負けたほうが服を脱ぐ……あれだよな?

 おっさんがエッチなお店でやるやつ……。


「ラブコメちゃん、野球拳やったことないの~? 野球拳処女?」


「ショ……そういう言い方があるのか知らんけど、まあ事実やったことはないな……」


 いやでも、普通の女子高生が経験あったらまずいやつなのでは⁉


「ちなみに私は下から脱ぐ派だからね♡」


 下……。マジですか?


「あ、やらし~♡ 今想像したでしょ!」


「ちがっ! メガミちゃんが下って言うから釣られて見ただけで!」


「あほくさ……。私は部室のほうに戻りますから、どうぞ好きなだけ脱いでください。ちなみにラブコメさんに忠告ですが、姉さんは生まれてから一度も、他人にじゃんけんで負けたことがありませんから」


「は? じゃんけんって運じゃねぇの⁉」


 一度も負けたことがないだと⁉ そんなことある⁉


「いえ~い♪ ブイブイ♪」


 ダブルピース……は良いとしても、舌出してアヘ顔は下品だからやめれ。


「少なくとも私は姉さんにじゃんけんで勝ったことがありません。野球拳も連敗中です」


「待て。姉妹で野球拳すなっ!」


「通算だと……100回くらいはやってるっけ?」


 やりすぎだろ! どれだけ野球拳好きなんだよ。

 って、メグミちゃん、100連敗もしているの⁉


「姉さん……492回です」


 100回どころの騒ぎじゃなかったわ。


「492回……メグミちゃん全敗?」


「姉さんからパンツ1枚はぎとることができずにいつもすっぽんぽんです」


 メグミちゃんの口からすっぽんぽんだなんて……。

 なるほど、興味深い。ちょっとその様子を見学してもよろしくて?


「でもあれだ。492回もやる前に、もう勝てないって気づかねぇの? さすがにもう諦めたほうがよくね?」


 何かのギネス記録でも狙っているの?


「そうですね。もう私も寮に入る時に服を脱ぐのに抵抗もなくなってきましたし、姉さんに手伝ってもらう必要はないのかもしれません」


「寮に入る時……どういうこと?」


「私たちの寮は全裸寮なので、服を着たままだと入ってはいけない決まりなのです」


「全裸寮!」


 あったな、そんなぶっ飛んだ設定!


「私は人前で裸になるのに抵抗がありまして……」


「逆に抵抗ない人がいたら見てみたいわ!」


「私は抵抗ないよ? むしろ積極的にこの体をみんなに見せつけていきたい所存!」


 もちろん1回……か2回か3回か10回くらいは見たいが、その後もずっと見せつけられると思うと……若干醒めてきたな。


「寮の前の更衣室で服を脱いでから寮に入る決まりなのですが、入学初日に私だけずっと服を脱げなくて……」


 まあ、恥ずかしいよね。

 でもメグミちゃん以外、ほか全員全裸になって寮に入っていったかと思うと、むしろそっちのほうに驚きを禁じ得ない……。羞恥心とかどこかに置き忘れたのかな?


「このまま更衣室で一夜を明かそうと決心したその時でした」


「救世主ならぬ、裸の女神様登場ってね♡」


「自分で女神言うな!」


 いや、本名か……。


「首から下の全身脱毛を終えた姉さんが、裸にソックス姿で現れたのです」


 え? うん?


「VIO脱毛完了でつるっつるのつるよ? 昨日助けていただいた時まではフサフサだったツルで~す♡」


「フサフサ言うな! その脱毛の件って今必要な情報だった⁉」


「ラブコメちゃんの視線が熱い♡ ヤケドしちゃいそう♡ な~に? 見たいの~?」


「そりゃ見たいけど?」


 逆に見たくないヤツなんておるん?


「即答できてえらい♡ 私に野球拳で勝てたら見られるよ♡」


 でもじゃんけん無敗伝説を引っ提げているんでしょ?

 それだと、当たりくじの入っていないスピードくじみたいなものでは?


「姉さんはこう言いました。『メグミ、野球拳で勝負よ。メグミが私にじゃんけんで1回でも勝てたらメグミの勝ち。メグミが私に勝てたら、もう寮には入らなくて良いわ。私が掛け合って、伝説の一般寮に移れるように交渉する。でももしメグミが負けたら、服を脱いでそのまま全裸寮に入りなさい。良いわね?』と」


 全裸ソックスの痴女が言いました、か。

 んー、今の部分はちょっと回想シーンでお願いして良いかな?


 ほわんほわんほわんほわわーん。


 ツルツルのツル。ソックス。ツル。ソックス……。


「ラブコメちゃんは、どっち派? ツルツル派? それともフサフサ派?」


「あ、今ちょっと割り込んでくるなって! 大事な回想シーンに入るところだったのに消えちゃったじゃんか!」


「海藻シーン? 海藻派?」


「そんな派閥ねーよ!」


 ヴィーナスの誕生かよ。

 いやあれも、別に海藻では隠してないな。やっぱりそんなマニアックな派閥は存在しない!

 貴重な回想シーンを逃してしまった……。


「それでメグミちゃんは野球拳でストレート負けして、全裸寮に入った、と?」


「そうです。それから姉さんは、毎日欠かさず私に野球拳を仕掛けてきています。そして私は今日まで一度も勝てていないのです。姉さんは無敵です」


 でもなんでメグミちゃんはちょっとうれしそうなの?


「姉さんのおかげで、私は寮暮らしができているんだと思います」


 そうかなー?

 ちょっと良い話風ではあるんだけど……全裸寮の存在自体が頭おかしいからなあ。


「普通に一般寮に移れば良くない?」


「そんなおそろしい……」


 メグミちゃんが目を見開いて……メガミちゃんも⁉


「えっ、一般寮って恐ろしいところなの⁉ オレ、これからそこに住むことになるんだけど⁉」


 詳しく教えて⁉

 もしかして、お化けが出るとか⁉


「ふ、服を着たまま生活する寮があるだなんて……」


「そっちのほうが普通だぞ⁉」


 全裸寮とか、全国探してもたぶんほかにないからね⁉ 海外にはあるのかもしれないけど!


「せ、せめてソックスだけ……」


「メガミちゃんのその性癖は自分でなんとか消化してくれ!」


 なんなの、この姉妹!

 全裸になるのを恥ずかしがっていた時のメグミちゃんを返して⁉ その時に出逢いたかったわ!


「お~い! みんなこんなとこにおったん? 部室のほう探してしもたわ~」


 ミナミちゃんがダンボールを積み重ねた台車を押して現れた。


「ミナミさん、すみません。全裸ソックス女に絡まれていました」


 それ自分の姉ー!


「メガミちゃん? 今日も元気やな~」


 全裸ソックス女で誰だか通じてしまうのか。狭い世界での悪い噂ってやつは、一瞬で広まってしまうからなあ。


「オッス~。裸エプロン女~」


 裸エプロン女……? 誰?


「って、みみみミナミちゃん! その格好は⁉」


 台車を押してきたのは……なんと裸エプロン女でした。


「しもた! つい癖で裸エプロンになってしもうたわ~」


 癖で⁉ どんな癖よ⁉


「あんな~、エプロン部は部室で裸エプロンになってエプロンを作る決まりになっとるんやわ~」


「あのさ……エプロン部ってたしか1人部活だよね……?」


「せやで~。ミナミが決めた部の決まりや。見えそうで見えへんのがかわいいやろ♡」


 台車を置いて、その場でくるりと1回転する。


「ミナミちゃん……」


 裸エプロンは後ろからは丸見えだって知ってます?


 なんていうかこの学園……服を着たまともな生徒はいないのか⁉

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