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第11話 あ~ね? マリリンマンソンとかボンジョヴィとか?

「あのさ……」


 お前らに言っておきたいことがある。

 一旦手を止めて、こっちに来て正座しなさい。


「部長~なんやなんや~?」


 と、裸エプロン姿のミナミちゃん。

 その姿のまま、足を開いてバナナボートに跨るのは絶対にやめなさいね?


「ブッチョサ~ン。良い子そろってるわよ~♡ 遊んでかな~い?」


 と、裸ソックス……ではなく、ギリギリバナナ柄のビキニ姿(+ソックス)のメガミちゃん。

 キャバクラのキャッチか。500円までなら遊んでいくけどな!


「今、部長専用のバナナ茶を淹れていますからしばらくお待ちください」


 と、制服姿のメグミちゃん。

 いつでも変わらないキミが好き。


 オホン。

 ではお前らに物申す!


「新部設立おめでとう。そしてありがとう。転校初日に部活を立ち上げられるなんて夢にも思っていなかったからとてもうれしいよ。だがしかーし!」


「部長、駄菓子はこちらです。バッキバキに硬いバナナ1房です」


 完全に緑!

 こんな色のバナナって、まだ収穫するの早いんじゃないのか⁉

 え、この状態で収穫するのが正しいの? バナナが出すエチレンガスで追熟して黄色く? 何言っているのかよくわかんねぇな。そしてバナナは駄菓子ではない。駄菓子もいらない。だがしかし!


「バナナは良いからメグミちゃんも一旦座って?」


 そこに正座してね。


「……私も2人のようにパンチラしたほうが良いですか?」


 メガミちゃんとミナミちゃんのほうをチラ見しつつ、ゆっくりと自分のスカートの裾をまくり始めた。


「いや……メグミちゃんは何言ってるの?」


 メガミちゃんは水着だし、ミナミちゃんは……たぶん穿いてない。誰もパンチラなんてしていないぞ⁉ でも見たい! 激しく見たい!


「イリュージョン♪ なんとここに、メグミの脱ぎたてのおパンツが! 1枚100円からオークション開始します!」


「姉さん⁉ いつの間に⁉」


 ええい! スカートを捲って確かめようとするんじゃない!

 正面に座っているオレに丸見えになるからね⁉


 見て良いなら……マジで見るけど?


「うちが買うわ! 25万3000円や!」


「そちらのお客様が25万3000円! ほかありませんか? ほかありませんか?」


 いきなり高けぇよ! 

 そんなガチな金額提示されたら、もうほかにあるわけなくね?

 オレの財布には500円しか入ってないし。


【2億じゃ】


「そちらのお客様が2億円いただきました! ほかありませんか? ほかありませんか?」


 2億円⁉ どういうこと? パンツどころかメグミちゃん本体より高い可能性も?

 ていうか、誰だ今の?


「私のパンツは2億円で売れるんですか……。一度寮に戻って在庫を確認してきます」


「待ちなさい。どう考えても冗談だぞ? それにメガミちゃんの手にあるのはパンツなんかじゃない。レースのハンカチだぞ。気づいてなかったのか?」


 また姉に遊ばれているぞ。


「私……穿いてました」


 そうだろうな。ていうか、さっきも言ったけど、オレの正面でスカート捲らないで? んー、白のレースってところは一致していたのね。デリシャス。


「そちらのお客様が2億円でハンマープライス!」


 だからどちらのお客様よ。

 メガミちゃんが差しているところには誰もいないじゃん?


「ぐわ~、負けてもうた~。あとちょっとで勝てたのに残念やわ~」


 頭をかきむしるミナミちゃん。


 熱くなっているところ悪いんだけど、2億からしたら25万は端数にもなっていないと思うぞ? 消費税も払えないからな。オークションに消費税がかかるか知らんけど。


「あー、そろそろこの茶番は終わりにして、オレの話を続けて良いか?」


 部長として物申したいわけだけど、今度こそ邪魔しないでくれる?


「茶番?」


 メガミちゃんはなんでそんなに不思議そうな顔してるんだよ。

 いきなりオークションとか2億とか、茶番以外の何物でもなくね?


「やったわ~! 2億円振り込まれた~! これで今年いっぱいの活動資金はゲットね♡」


 メガミちゃんがスマホの画面を見て小躍りを始めた。


「2億ですか。少し心もとない気もしますが、あとは地道にエプロンを売って稼ぎましょう」


「目指せ、年商50億やで~」


「裸エプロン写真を解禁すれば余裕で達成できそうですね」


「せやな~。裏サイト作ってこっそり稼ごか~」


 おいこら待て!


「オレが一瞬黙っただけで、ボケの大渋滞が起きているじゃんか……。なんなの? 全員ボケないと死ぬ生き物なの?」


 そういう呪いにでもかかっているの?


「「「ボケ?」」」


 一斉に首を傾げてるんじゃないよ。仲良しか!


「でもホントに2億円振り込まれたわよ?」


 メガミちゃんがスマホの画面をオレに見せてくる。


 メガミ銀行メガミ支店

 振込 バナナジンジャバナコ +200,000,000円


「マジ? デモサイトのフェイク画像とかじゃなくて?」


「そんなことして何の意味があるのよ」


「まあそりゃそうか……。ところでその振込元の『バナナジンジャバナコ』って何?」


 マジで2億も払った人がいるんだよな?

 さっき落札した人? 誰もいなかったのになんで?


「ラブコメさん、自分の部活の顧問の先生のお名前くらいは覚えたほうが良いですよ」


「顧問? ああ、そうか。部活って顧問が必要なんだっけ。うちの部の顧問の名前が『バナナジンジャバナコ』先生ってことか?」


 だいぶ変わった名前だな。


「そやねん。うちらの顧問、馬七神社バナコ先生やで~」


 馬七神社バナコ。

 だいぶ変わった名前だな。

 先生って、さっきまで部室にいたの? もう帰っちゃった? オレ、挨拶できてないんだけど。


「私たちの『ラブ♡ラ部』の顧問の先生は太っ腹よね~。バナコ先生ってば、バナナみたいにすらっとしていてモデルさんみたいだし~」


 すらっとしたモデルさんみたい?

 妙だな……。

 〇リコンのメガミちゃんがモデルみたいに背の高い大人の女性を褒めるとは、どういう風の吹き回しだろうな? お金をたくさんくれたからか? 好みより金か?


 って、そうじゃない!


「それだよそれ! 部活の名前!」


「「「ラブ♡ラ部?」」」


「だからいちいちハモるな! お前ら仲良しか! なんでそんな名前で申請したんだよ! オレがサインした書類には、『バナナエプロン部』って書いてあったろ!」


 おかしいだろ!

 書類が受理された時までは確実に『バナナエプロン部』だったはずだ!


「え~、普通過ぎてつまんないから、私が書き換えておいたよ♡ 良い仕事した~♡」


 メガミ! やっぱり犯人はお前か!


「姉さんグッジョブです。むしろGJ部です」


 なんで言い直したの⁉


「ついでに滑り込みで私の名前を部員に加えておいたよ~♡」


「それもGJ部やんか! 部員はなんぼおっても困らへんからね」


 おい、ミナミ!

 お前のエプロン部は1人だったろ。「1人は気が楽で良い」とかなんとか言ってなかったか?


「やはりリーダーの名前を部活の名前にするのは定番ですからね。姉さんGJ部です」


「リーダーの名前を部活の名前に? そんな部活名、聞いたことないが……」


 ていうか、さっきから連呼しているけれど、メグミちゃんはGJ部好きだったの?


「あ~ね? マリリンマンソンとかボンジョヴィとか?」


「念のためツッコんでおくが、それはバンド名だからな?」


 部の名前ではないだろ。


「ラブの後のハートマークがポイント高いやんな~♡ うちらもラブちゃんラブ♡やし、名は体を表す的な~?」


 オレのツッコミは無視か!


「私が副部長なのでラブコメさんとラブラブするのは私の役目です」


「この世界は年功……胸功序列よね? つまり胸のサイズがすべて! 私が1番♡」


 ちょっとー!

 姉妹でオレのことを取り合わないでー!


 って、これってまさか……モテ期が来ちゃったってやつなのか?

 この部活って実質ハーレム⁉

 マジで? 良いの? こんな美少女たちとラブ♡ラ部して良いの⁉


「姉さん大変です! そろそろ寮の門限の時間です!」


「まずいわね。急がないと亀甲縛りで貼り付けにされるわ!」


 門限の罰が斜め上!


「ミナミは別にそれでもええけど?」


 あー、ミナミちゃんはそっちの趣味の人ですか……?


「えっと……今日の部活は終わり、かな?」


「ラブコメさんも急いでください。一般寮の門限が何時かは知りませんが、早く帰ったほうが良いです」


 メグミちゃんの顔に余裕が感じられなかった。

 慌てたようにカバンを背負うと、お茶の道具を洗い始めた。


「私たち着替え……もうこのままでいっか!」


「せやな! どうせ寮についたら脱ぐんやし、大して変わらへん」


 やっぱり倫理観バグってるなあ。

 ホント全裸寮って何なの……。


「えーと、お忙しいところ恐れ入りますが、オレ……一般寮の場所知らないんだけど……」


 誰か案内してくれたりは……?


「部室のカギを返すついでに、職員室で先生に訊いたら良いんじゃな~い?」


「せやな。ミナミたちは急いでるねん。ラブちゃんと遊んでる暇ないんや」


 遊ん……そうですか……。


「ラブコメさん、ご武運を。それでは最後に鍵を閉めて職員室に鍵を返すのは部長の仕事ですので、私たちは失礼します」


 メグミちゃんまで……。


 みんな急に冷たい……。

 ぜんぜんモテ期来てなかったみたいだわ……。


 寮に辿り着けても、たぶん誰も知っている人がいないんだよなあ。

 うちのクラスはオレ以外全員全裸寮だって話だし、ほかのクラスの人と仲良くするしかないか……。

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