ある日、アルシェナールが王宮での会議を終えて控え室に戻ると、アシュレイが待っていた。彼はいつものように穏やかな笑みを浮かべながら、彼女を迎えた。
「お疲れさま。今日も大成功だったみたいだね。」
「ありがとう。けれど、これで終わりではないわ。まだやるべきことがたくさん残っているもの。」
アルシェナールはそう言いながらも、アシュレイの前では少しだけ肩の力を抜いた。彼女にとって、彼の存在は心の安らぎそのものだった。
「それで、今日はどうしたの?私に何か用事でも?」
彼女が尋ねると、アシュレイは少しだけ照れたように視線をそらしたが、すぐに真剣な表情に戻った。
「実は……君との婚約を正式に発表したいと思っているんだ。」
その言葉に、アルシェナールは一瞬驚いたように目を見開いた。だが、すぐに微笑みを浮かべ、静かに頷いた。
「分かったわ。私もその準備はできている。」
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翌週、王宮の一角で婚約発表の式典が行われた。その場には王族や貴族たちが集まり、アルシェナールとアシュレイを祝福するための華やかな雰囲気が漂っていた。
アルシェナールはシンプルながらも上品なドレスに身を包み、アシュレイの隣に立っていた。彼女の姿は凛とした美しさを放ち、その場の誰もが彼女に注目していた。
「本日、私はアルシェナール・エルディナ嬢との婚約を正式に発表します。」
アシュレイが堂々とした声で宣言すると、会場内は拍手に包まれた。貴族たちの中には、かつてアルシェナールを見下していた者たちもいたが、今や彼女を無視することはできなかった。
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式典が終わり、招待客たちが次々に彼女の元へ挨拶に訪れた。
「アルシェナール嬢、おめでとうございます。これからのご活躍も楽しみにしております。」
「まさかここまで成功されるとは……いや、素晴らしいお方だ。」
かつて冷たく見下していた者たちが頭を下げて祝辞を述べる姿に、アルシェナールは冷静な微笑みを浮かべながらも、内心では複雑な感情が込み上げていた。
(私を見下していた人たちが、今は頭を下げているなんて……。でも、今の私にはそれを責める気持ちはない。)
アルシェナールは過去の苦しみを乗り越えた自分を実感しつつ、ただ穏やかにその場を過ごした。
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その日の夜、式典が終わった後、二人は静かな時間を過ごしていた。星が輝く夜空の下、庭園のベンチに腰を下ろしたアルシェナールは、アシュレイに感謝の言葉を伝えた。
「アシュレイ、本当にありがとう。あなたがいなかったら、私はここまで来ることができなかったわ。」
「感謝するのは僕の方だよ。君と出会って、僕の人生も変わった。これからは一緒に歩んでいこう。」
アシュレイはそう言って、優しく彼女の手を取った。その手の温かさに、アルシェナールは心からの安らぎを感じた。
「ええ、一緒に。」
二人の誓いは、これからの新しい関係を象徴するものだった。そしてその関係は、誰にも壊すことのできない堅い絆となっていく。
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