ココが投げたのはただの土だったはずだ。
しかし、今やそれはとんでもないスピードと威力を持つ、とんでもない数の砲弾となっていた。
数百の光の玉が空気を切り裂いてダークドラゴンへ向かっていく。
これが飽和攻撃ってやつか。
ドラゴンの目に驚きの感情を見た気がした。
やつは大きく口を開き、炎のブレスを吐こうとするが、光の玉のほうが早い。
光球はドラゴンの防壁を障子みたいに簡単に破り、そしてドラゴンの巨体を貫いた。
真っ黒だったドラゴンの身体。
そこに、数百の穴が開いて、向こう側の空が見えた。
即死だろうことは誰の目にも明らかだった。
ドラゴンの頭上にあるステータスが変化した。
●SSS⇒N/A
▲SSS⇒N/A
■SSS⇒N/A
✿SSS⇒N/A
★K⇒N/A
それを見て、ああ、死んだんだな、と確信する。
空を飛んでいたダークドラゴンは、重力に引っ張られるようにほとんど垂直に落下して、まだ燃え盛っている麦畑の中へと墜落した。
ズゥン、と音がして、地面が揺れた。
あとに残ったのは、屋敷が激しく燃えるバチバチという音。
麦畑もあちこちでまだ燃えていて、あたりのそこかしこから煙が立ち上っている。
「やった! やった! やった! ほら、ほら、ほら、ほらね、私の言った通りですわ、ほんとうに救世主様です! 絶対、絶対、絶対、いつか救世主様が私を……私たちを救いに来てくださると、ずっと信じていたのですわ!」
ココは恍惚とした表情で俺の顔を見る。
その場でひざまずいて俺の手の甲にキスをした。
ココの衣服は乱れていて、胸元も開いてしまっていた。
俺は思わずそこを覗き込んでしまう。
いや、別によこしまな気持ちはない。
……ごめん、少しはあったけど。
でも、そこに見えたのは、なにかおどろおどろしい文字とマークが彫られた、入れ墨だった。
ああそうか、これがきっと奴隷の証だ。
シュリアはその場にへたりこんでいた。
「まさか……今まで誰も倒せなかったダークドラゴンを……あんなあっけなく……。本当に救世主様……?」
●C
▲A
■A
✿C
★B⇒S
シュリアのステータスが変化する。
「そんな……まさか……馬鹿な……信じられん……。我が国最高の攻撃魔術師でも倒せなかったのだぞ……」
ガルニもそう呟いて呆然と立ち尽くしている。
●A
▲A
■C
✿ENP
★D
ガルニのステータスは変わらない。
そのガルニが俺に近づいてきて、言った。
「客人、いったいあなたは……? 今のはあなたの魔法……だよな?」
「いや俺はなにも……この子では?」
俺はココを目で指し示す。
「まさか! その奴隷はなんの訓練も受けていないんだ。検査したが素質も認められなかった。それに、奴隷として胸元に魔法で彫った入れ墨を入れている。魔法封じの刻印だ。魔法を使えるわけがない。絶対にだ。だから、今のは……あなたの魔法のはず……」