「俺と風羅ちゃんのR18ラブストーリーを書かなかったんだ!?」
ーー言ってやった!今回のクレームの件を。
俺の言葉に、目を見開く六つ子の腹黒次男坊。豆鉄砲くらったように動作が固まる。
この好機を逃がさない。このまま、━━畳み掛ける。
「先日、俺は公式SNSで君の出版社の企画に参加し、【三周年記念 水無月先生に依頼して小説を執筆してもらおう☆】の一日限定オークションに応募した」
「あぁ……、それはどうも?」
「その競りに、かなりの額を入札した。その金額は、一般人にはすぐに出せない額のはずだ!五十万だぞ!五十万円ッ!!」
「………………」
立場が悪くなったのか、こちらをじっと見据えていた相手は視線を外す。そして、静かに茶器に口をつけお茶を啜る。
追い詰めた、と確信した瞬間である。
「その後、君に書いてもらいたい俺と風羅ちゃんのストーリー内容も合わせて添付してDMで送った」
「…………」
「それから半年。待ちに待った依頼小説の雑誌本を読んでみると……。まぁ、中身が俺とお前の兄貴である長男との……………だったし」
「猿堂さんと海里兄さんのアダルトBL本、でしたね~~♪確か、嵐➕猿堂当主×海里兄さんの三角関係の愛憎小説だったんですよね?ぷふふっ……」
「笑顔でストレートに言うなよ!オブラートに包んだ気遣いの意味がねえじゃねえかYOッ━━!?」
「あぁ、すみませーん。気づきませんでしたぁ〜〜☆」
「そういうところなんだよ!嵐のKYと似てやがるって、そもそ……」
「あんなチーカマKYと一緒にしないでくださいってさっきから言ってるじゃないですか!
もしかして、若年性認知症なんですか!?可哀想に……猿堂当主。これからはヘルパーさんを連れた方が良いですよ、切実に」
「認知症じゃねぇから!ーーって、話逸らすなって言って……」
「そういえば、猿堂さんと海里兄さんの濡れ場シーンですが意外と人気が出ましてね。と・く・に、猿堂さんが海里兄さんを〇〇せようと座敷牢に閉じ込める辺りが……」
「待て待て待て待て待て!ちょ、え、ま、嘘だろッ!?お前、何を書いてんだよ!!」
「その流れで、番外編も書くことが決定になったんですよね〜!いや〜、ありがとうございまーーす」
「ーーッ!?な、なに勝手に話を進めてやがるだYOッ!風羅ちゃんに知られたら、マズいじゃねーかよ!!」
「あぁ、大丈夫ですよ。安心してください、猿堂当主」
「…………(良かった、風羅ちゃんに知られてねぇな。そこら辺の配慮は、嵐の野郎と違うな……さすがは長兄組はちが……)」
「風羅は、ちゃんと知ってますからね!猿堂当主が小説の主演希望をしていた書籍を読んであげてって言ったら、渋々読んでくれましたからご安心ください」
「ーーNooooOOOOッ!!おま……おま……お前、ほんと、マジでなんてことをしてくれたんだよ!!」
「その後、猿堂さん主演の感想を聞いたんですよね〜」
「…………なんて言ってたんだ?もしかして、猿堂さん可哀想とか…」
「『なんだか、小説を通したラブレターみたいね、コレ。それにしても海里兄さんのことが好きだったのね…猿堂さん』」
「…………え?」
「『確かに私と海里兄さんは目つきが似ている。でも、だからって私を代替えして良い理由にはならないけどね……』ーーだそうです」
「え……嘘、だろ?風羅ちゃん」
「最後に、『人を利用して恋愛しようとするなんて、最低……』と言ってましたよ☆」
「………………」
「良かったですね!猿堂当主。風羅に思いが伝わりましたよ☆」
「ーーうるせぇYOッ!というか、思いが伝わるどころか、最悪な方向にいっただけじゃねぇかよ!!」
「まぁ……しょうがないですよ。タイミングが悪かった……それだけですよ」
「いや、お前のせいだろ!この腹黒がッーー」
「ーーで、あの〜さっきから何が言いたいですかぁ?僕、仕事が忙しい中わざわざ、わざわざ此処に来たんですけど。用が無いなら、帰宅して猿堂さん×海里兄さんの番外編を書かないと」
「ーーッ!……まず、お互いに冷静になろうか。宇宙くん」
「僕は最初から通常のままですよ?そもそも猿堂当主が一人で子供みたいにピーチクパーチク騒音を出しているんですよ?」
「き、君、人の心遣いを無碍にするなんて……」
「だから、嵐と〈学習力ないコンビ〉って周りの厄除師たちから認定されるんですよ、アンタ」
「━━━━━~〜ッ、まぁ、本題に戻すと、俺が競りで落札したのに関わらず!こちらの要望していた小説を書くという、約束を破ったことに腹を立てているんだ!!」
「…………」
「これは、━━詐欺だ!今すぐに、この内容を撤回しろ」
「そうすると、その分お金がかかりますよ?この場合、いくらくらいかかるかな…?一千万くらい、いや、それ以上かな?」
「……同業のよしみで表沙汰にしないから、すぐに落札金を返金するか?あるいは今すぐに、早急に、俺と風羅ちゃん主演のR18身分差ラブストーリーを書くか!?それとも、俺と風羅ちゃん主演のR18スクールラブストーリーを書くのか!?━━どれか、選べッ!!」